相手の言葉の上澄みだけをすくって、「うんうん」とうなずいているだけでは、相手の本音・真意にはたどり着けません。本気で耳を傾け、心の奥にあるものを丁寧に引き出そうとする姿勢が問われます。
人は、自分の本当に大切にしているものに気づいたとき、迷いが晴れ、前に進む力を取り戻します。その気づきを引き出せるかどうかが、牽引モードの腕の見せどころです。
可能性を引き出す人が相手を動かす――思考をデザインする「質問マトリックス」
「やりたい業務は特にありません」と目をそらす人がいます。また、「自分は失敗ばかりで……」と、過去のつまずきばかりを繰り返し話す人もいます。
そんなとき、リーダーとして何か前向きな言葉をかけたくなるものですが、何をどう伝えていいかわからないという人も多いのではないでしょうか。
こうした場面で役に立つのが、「質問マトリックス」という思考のフレームです。このマトリックスは、「時間軸(過去/未来)」と「感情軸(ポジティブ/ネガティブ)」の2軸で構成された、4つの象限から成り立っています。
人は無意識のうちに、特定の象限に偏って話をする傾向があります。その偏りが固定化されると、視野が狭まり、思考は堂々巡りになってしまいます。
マトリックスを活用すると、相手がどの象限にいるかを把握することができ、そのうえで、あえて別の象限から問いかけることで、視点の転換を促すことができます。
たとえば、「目標がない」と立ち止まっている部下には、「逆に、どんな未来だけは避けたいと思いますか?」と尋ねてみます。人は理想よりもリスクへの感度のほうが高く、避けたい未来なら比較的語りやすい傾向があります。
相手の返答に共感を示したうえで、「その避けたい未来の中に、理想の種が隠れているかもしれませんね」と返すことで、ぼんやりとしていた目標の輪郭が浮かび上がってくることがあります。
また、過去の失敗ばかりを語る部下には、「その経験があったからこそ得たものはなんだと思いますか?」「その得たものを今後にどう活かしますか?」と聞いてみましょう。
失敗を「意味のある経験」「未来への糧」として再定義することで、自己否定から抜け出しやすくなります。同じ過去でも、問いが変われば、意味も変わるのです。
このように、マトリックスを意識することで、状況や目的に応じた問いを選べるようになります。
未来のポジティブな面ばかりを語る相手に対し、楽観的すぎる印象を受けた場合は、あえてネガティブ象限の質問─―たとえば、「もしうまくいかなかった場合、どんなリスクがあると思いますか?」─―を投げかけることで、冷静な視点を取り戻させることもできます。


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