お互いを想っているはずなのに、その気持ちが絶望的に噛み合わない。すべては貧困のせいだった。
東大模試の前日、「生活保護受給世帯の子どもは大学には進学できない」という現実を知った。
生活保護受給世帯の子どもは大学には進学できない
生活保護を受給する世帯にとって、子どもの大学進学は「贅沢」である。大学に進学しようと思ったら、世帯分離の手続きをして生活保護受給世帯から外れる必要がある。すると世帯の人数が減るので、家族に支給される生活保護費は減ってしまう。
そのことで父親と大喧嘩になり、あまりの騒ぎに警察がやってきた。このとき出会った一人の警察官が、清野さんの心を地獄から掬い上げてくれた。
警察署で両親が取り調べを受けている間、その年配の警察官は清野さんと妹に両手いっぱいの菓子パンを食べさせ、両親の病気のこと、家族が生活保護を受けていること、家庭内トラブルのこと、自分が東大を受験するということ……それまで清野さんが一人で抱えてきたことを、何時間もかけて聞いてくれた。そして、清野さんの目を見て、力強く断言した。
「君は、過酷な環境の中で未来をつかもうとしている。君は、絶対に応援されるべき人間だ」
「だから、負けるな。君なら必ず東大に行ける。君ならこの社会を、きっとより良く変えられる」
自分の頑張りを肯定して、信じてくれる大人もいる。まだ、絶望するわけにはいかない。
警察の保護施設で一晩を過ごし、翌朝、東大模試の会場へ向かった。結果は、文科一類全国3位。A判定。心身が限界を迎える中で、清野さんの脳は信じられないほどの成果を叩き出してみせた。
清野さんはその後、東京大学文科一類に現役で合格。法学部へ進み、最優秀成績で卒業した。現在はロースクールで法律を学びながら、教育の仕事にも携わっている。
「僕を引き合いに出して、『同じ環境でも東大に行った人がいるんだから、できないのは努力不足だ』と言う人がいるとしたら、それは違うと思います」


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