こうした一連の流れは、現代のSNSが抱える問題を象徴している。切り抜き動画を見たユーザーたちが一斉に騒ぎ立て、「昔から面白くなかった」といった本件とは直接関係のない悪意ある言葉を混ぜて批難する。さらには、そこにネットメディアが飛びつき、切り抜き動画をもとにした情報が広がっていく。
しかも、炎上した誤情報は拡散されやすいのに対し、後日発信された正しい情報はなかなか広がりにくい。炎上したSHOの投稿のインプレッションが3450万回であることからも、倍以上違う計算になる。SNSが著名人やファン同士のつながりだけでなく、無関係なユーザーにも同じ情報が流れ込み、発信までできてしまうゆえの弊害だろう。
その情報の正誤を誰が確認するのかという責任も曖昧なまま、多くの場合は批判対象者やその関係者が何らかの形で真実を伝える必要に迫られる。SNSでゴシップや陰謀論、考察といった投稿がバズりやすいのは、こうした特性もあってのことだと思えてならない。
『昭和の悪ノリ』の正体
お笑い界のベテランが問題視されるたび、SNSでは「昭和の悪ノリ」といったワードがよく登場する。ただ、それがテレビの過剰演出を指すのだとすれば、その多くは昭和後期から平成初期に作られた番組だ。
現在のバラエティーに強い影響を与えたひとり、コント55号・萩本欽一は『お昼のゴールデンショー』(フジテレビ系。1968年放送開始)など数々の番組を手掛けたテレビプロデューサー・常田久仁子氏からのアドバイスによって、「言葉遣い」や「衣装」を意識するようになったと本人から聞いたことがある。
下町の荒々しい言葉をやめて「○○なのよお」などと柔らかい口調で話すようになり、慣れないジャストサイズのキレイな衣装を着てテレビに出るようになったという。浅草の師匠からの教えでダジャレや下ネタも言わない。それらは、“コメディアンの地位を向上させたい”という萩本の理想を実現させるためにも生きた。
萩本は、「素人いじり」「突撃ロケ」「タレント発掘」といった映画・舞台とは異なるテレビ的でスリリングな面白さを開拓していった一方で、ドラマ枠である21時台にバラエティーを立ち上げて成功させ、『24時間テレビ』(日本テレビ系)の司会者を務めるなど国民的コメディアンとして確固たるポジションを築いていく。


※ログイン後、コメント入力が可能です。