有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ビジネス

「職人のパン」を数値化し「誰が作っても同じ味」を実現…それでも大手スーパーが拡大路線をやめ《熱海周辺5軒》に絞った理由

11分で読める
蒸しパン
できたてほやほやの蒸しパン。冷ましてからパッケージされる(写真:筆者撮影)
  • 谷口 素子 取材ライター・コラムニスト
2/7 PAGES
3/7 PAGES
4/7 PAGES
5/7 PAGES
6/7 PAGES

筆者は、しばらく売り場を観察してみた。カゴを持った客は、まず売り場の横に置かれた無料の白い箱を手に取る。潰れにくく、そのまま土産にできる箱だ。買い物のついでに1個、ではない。最初から箱で買う前提の設計になっている。

県外からの客も多い。当初はネットで調べて来たという親子連れは、「熱海に来たら大量に買って冷凍する」という。

地元の人は、「栗が人気なのは知っているんだけど、私はメープルが好き」と言いながら、2個をカゴに入れていた。

印象的だったのは、父親の墓参りのついでに訪れたという母娘だ。最初に数個を手に取り、店内を回ってから売り場に戻り、また買い足す。最後には箱いっぱいの蒸しパンを抱えていた。一度では決めきれない、という買い方だった。

売り場には無料の箱が置かれている(写真:筆者撮影)

物理的に「熱海でしか買えない味」

蒸しパンの賞味期限は製造から48時間。楽天市場でも販売しているが、北海道や九州、離島からの注文は受け付けていない。届く前に期限が切れるからだ。

チェーンスーパーの商品でありながら、この蒸しパンは全国流通できない。だがその制約こそが、「熱海でしか買えない味」という価値を担保している。熱海商工会議所が土産品として認定する「ATAMI COLLECTION A-PLUS」に栗味が選ばれているのも、その裏付けだろう。

効率化できなかったことが、そのままブランドになった。

7/7 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数