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「職人のパン」を数値化し「誰が作っても同じ味」を実現…それでも大手スーパーが拡大路線をやめ《熱海周辺5軒》に絞った理由

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蒸しパン
できたてほやほやの蒸しパン。冷ましてからパッケージされる(写真:筆者撮影)
  • 谷口 素子 取材ライター・コラムニスト
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ところが、せいろによってはプレートが付いていないものもある。

「これは栗です。栗は一番人気で、全体の売り上げの約4割を占めています。だから、プレートがないものは栗。これもひとつの業務効率化です」鈴木さんはそう説明した。

職人の勘に頼るのではなく、誰が担当しても間違えないようにしているのだ。スーパーでほていやの味を残すための仕組みが、作業場のあちこちに組み込まれている。

と、ここまでは、うまくいった話だ。

数値化できたものと、できなかったもの

職人の勘は、数字に置き換えられた。だが、厨房そのものは数値化できなかった。まず、機械に置き換えられなかった。

蒸しパンは平日700〜800個、休日には1200個。近隣店舗への配送分も、楽天市場の通販分も、すべて熱海店の厨房で作る。これだけの量を手作業でこなすなら、どこかを機械化したくなる。実際、試してもいる。

「私たちも、包装なら機械でできるのではないかと試してみました。でも、うまくいきませんでした。原因はわからないのですが、機械がすぐに止まってしまうんです。そうなると手作業のほうが早いので、今はスタッフが一つひとつ包んでいます」(鈴木さん)

湿気が命の蒸しパンである。どうやら、湿気を嫌う機械との相性は、あまりよくないらしい。理由が特定できないまま、包装だけは人の手に戻された。

包装もすべて手作業で行う(写真:筆者撮影)

次に、時間もずらせなかった。

鈴木さんたちは朝5時に作業場へ入る。ならば前日のうちに生地だけ仕込んで、冷蔵庫で寝かせておけばいいのでは──そう思って聞いてみた。

「イースト菌は生き物なので、混ぜてしまうと、そこから発酵が始まって味が変わってしまうんです」

その日に売る分の生地は、その日の朝に作るしかない。仕込みを前倒しすれば、労働時間は平準化できる。だが味が変わる。だから、始業時刻は動かせない。

こねた生地をまとめて伸ばしていく(写真:筆者撮影)
生地を4ミリに伸ばすのは機械を使う(写真:筆者撮影)
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