ところが、せいろによってはプレートが付いていないものもある。
「これは栗です。栗は一番人気で、全体の売り上げの約4割を占めています。だから、プレートがないものは栗。これもひとつの業務効率化です」鈴木さんはそう説明した。
職人の勘に頼るのではなく、誰が担当しても間違えないようにしているのだ。スーパーでほていやの味を残すための仕組みが、作業場のあちこちに組み込まれている。
と、ここまでは、うまくいった話だ。
数値化できたものと、できなかったもの
職人の勘は、数字に置き換えられた。だが、厨房そのものは数値化できなかった。まず、機械に置き換えられなかった。
蒸しパンは平日700〜800個、休日には1200個。近隣店舗への配送分も、楽天市場の通販分も、すべて熱海店の厨房で作る。これだけの量を手作業でこなすなら、どこかを機械化したくなる。実際、試してもいる。
「私たちも、包装なら機械でできるのではないかと試してみました。でも、うまくいきませんでした。原因はわからないのですが、機械がすぐに止まってしまうんです。そうなると手作業のほうが早いので、今はスタッフが一つひとつ包んでいます」(鈴木さん)
湿気が命の蒸しパンである。どうやら、湿気を嫌う機械との相性は、あまりよくないらしい。理由が特定できないまま、包装だけは人の手に戻された。
次に、時間もずらせなかった。
鈴木さんたちは朝5時に作業場へ入る。ならば前日のうちに生地だけ仕込んで、冷蔵庫で寝かせておけばいいのでは──そう思って聞いてみた。
「イースト菌は生き物なので、混ぜてしまうと、そこから発酵が始まって味が変わってしまうんです」
その日に売る分の生地は、その日の朝に作るしかない。仕込みを前倒しすれば、労働時間は平準化できる。だが味が変わる。だから、始業時刻は動かせない。


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