これは「一番くじ」やスマホゲームのガチャ、トレーディングカードなどにも共通する構造である。欲しいものをそのまま買わせるのではなく、何が出るかわからない状態にすることで、消費者は繰り返し挑戦したくなる。目当ての商品が出るまで何度でも試す人がいる以上、提供する側にとっては合理的な販売・販促手法である。一方、利用者にとっても、「次は当たるかもしれない」という期待そのものが娯楽になっている面がある。ビッくらポン!は人間の射幸心や収集欲を利用した仕組みであると言える。
だからこそ、この仕組みには絶対に欠かせない前提がある。それが「公平に抽選されている」という信頼である。確率が低くても構わない。それを理解したうえで参加するのであれば、何度外れても最終的には自分の運が悪かったと納得できる。しかし、そもそも欲しい景品が最初から抜かれていたとしたら話は変わる。存在すると思って挑戦していたものが最初から存在しないのであれば、「運が悪かった」という問題ではなくなるからだ。
ちいかわグッズ目当てに来店した客も
今回の事件が強い反発を引き起こした理由はそこにある。利用者の中には、ちいかわグッズを目当てに店を予約し、普段以上に寿司を注文し、何度もビッくらポン!に挑戦した人もいたはずだ。そのような人々は、必ず景品がもらえると思って金を払ったわけではない。それでも、「正しく抽選されている」という暗黙の前提は信じていたはずである。その信頼が崩れれば、それまでは単に運が悪くて残念だと思っていたのが、一気に「自分たちは不公平なゲームに参加させられていたのではないか」という怒りへと変わる。
実際、SNS上でフィギュアが出ないという声が増えた際、フリマサイトでは特定のコラボ景品が大量に出品されていることなども指摘され、従業員による抜き取りを疑う声が広がっていた。くら寿司は9月2日にこのようなコラボグッズの不適切な取り扱いに関する投稿について調査すると発表した。景品は原則として鍵付き倉庫に保管し、複数人で開封・補充するなどの管理を行っていると説明していた。しかし、その3日後には実際に従業員による不正行為が判明し、キャンペーン全体の中止に至った。
もちろん、現時点で公表されている情報だけから、「フィギュアが出なかったすべての店舗で従業員による抜き取りが行われていた」と考えることはできない。不正の具体的な規模や、それが実際の景品排出率にどの程度影響したのかは不明である。
ただ、もともと多くの利用者が違和感を覚えていたところに、実際の不正が判明してしまったために、人々の怒りは激しいものになった。キャンペーンが中止になったことで、これから景品のために店に足を運ぼうと思っていた人の望みも絶たれた。くら寿司側としてはあってはならない不祥事だったのだ。


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