さらに諸澤氏は、ビジネスモデルそのものにも問題があると指摘する。スポーツジムと同じで、従来の英会話サービスは「通わない幽霊会員が増えるほど儲かる」構造になりがちだった。会費だけ払って来なくなる人が多いほど、事業者の収益性は上がる。顧客の成果と事業者の利益が一致していないのだ。
この構造への異議は、イングリードだけのものではない。「結果にコミットする」を掲げるRIZAP ENGLISHは英会話コース24回(約3カ月)で58万0800円(税込、入会金5万5000円別)、PROGRITはビジネス英会話コース3カ月で63万2500円(税込、入会金込み)、TORAIZは1年間で1000時間の学習を行うスピーキング本科のプロフェッショナルプラン(週3回レッスン)で134万6400円(税込、入会金込み・教材費別)からと、いずれも高額帯で「成果に対価を払う」モデルを取る。2010年代半ば以降、英語コーチングという業態が生まれた背景には、共通の問題意識がある。
前出の増田さんも、10年ほど前に英会話スクールへ1年通った経験がある。だが週1回の授業だけでは実感が薄く、妊娠を機にやめてからは英語から遠ざかった。「必要になってから慌てて追いかける。そんな状態が続いていた」と振り返る。
「安く学べる時代」なのに英語力が伸びない矛盾
無料アプリ、数千円の参考書、格安のオンライン英会話。英語学習の手段は年々増え、価格も下がり続けている。ところが、日本人全体の英語力は改善していない。
国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が25年に発表したデータによると、TOEIC Listening & Readingの国・地域別平均スコアで日本は564点(24年)。ベトナムの570点を下回り、中国の561点とほぼ並ぶ水準にある。話す力を測るTOEIC Speakingでは、公表されている国・地域の中でも下位に位置する。
手段が増えたのに結果が伴わない。この矛盾が諸澤氏の問題意識の出発点だ。「これだけ手軽なサービスが出てきたのに、日本人の英語力は伸びていない。むしろ世界の中では置いていかれている」


※ログイン後、コメント入力が可能です。