有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ビジネス

KDDI「山口衛星通信所」が宇宙の玄関口に、海外通信を支えた57年の拠点が低軌道衛星時代に狙う新たな役割

7分で読める
KDDI山口衛星通信所に立つ直径34mと32mのパラボラアンテナ。今は国立天文台と山口大学が電波望遠鏡として使っている。特別な許可を得て撮影
KDDI山口衛星通信所に立つ直径34mと32mのパラボラアンテナ。今は国立天文台と山口大学が電波望遠鏡として使っている。特別な許可を得て撮影(写真:筆者撮影)
  • 石井 徹 モバイル・ITライター
2/4 PAGES

山口県は人口減少などを背景に、産業維新、大交流維新、生活維新と呼ぶ3つの施策を進めている。KDDIはそれぞれに宇宙、人流データ、ドローンを当て、産業維新には「宇宙が日常になる地球の玄関口に」という言葉を添えた。両者は協定の背景として、宇宙通信の需要拡大が見込まれる中で、衛星通信所を通じた半世紀の関係を礎にしたと説明している。

県が掲げる産業維新、大交流維新、生活維新の3つと、その背景にある若い世代の県外流出やインフラの老朽化などの課題。KDDIは「つなぐチカラ」で応えるとした(写真:筆者撮影)

宇宙で計算したデータを、地球のどこに落とすか

松田氏は締結式で、宇宙はもう夢の世界ではないと述べた。衛星が次々に上がって宇宙産業が発達すると、宇宙と地球の間の通信を誰が担うのかが大事になり、そこに山口の出番があるという筋立てだ。宇宙の経済圏が育ち、データを地球のどこに落とすかを選ぶ段になったとき、「宇宙から選ばれる街、山口にしてまいりたい」と述べた。

締結式でKDDIは、衛星の年間打ち上げ数が2016年の220機から2025年には4500機に増えたと説明した(写真:筆者撮影)

締結式後の囲み取材では、さらに踏み込んだ。AIのデータセンターを宇宙に置く構想まで出てきており、そうなると宇宙で計算した結果を地球のどこに下ろし、どこで通信するかが問題になるという。

松田氏は事業者名を挙げなかったが、KDDIの提携先である米SpaceXがこの構想を掲げる1社だ。1月には、AIデータセンターとして働く衛星を最大100万基運用する構想を米連邦通信委員会(FCC)に申請した。8月にはイーロン・マスクCEOが、NVIDIAと組んだ第1世代のAI衛星を2027年10〜12月に打ち上げ、2028年に規模を広げると表明した。

両社の提携は2021年からで、KDDIは2025年4月に、スマートフォンが衛星と直接つながる「au Starlink Direct」を開始した。スマートフォンと衛星の直接通信を通信事業者が提供するのは、アジアで初めてだった。山口県内でも、これまで圏外だった山間部でつながるようになり、松田氏は締結式で、家で待つ家族に居場所が伝わるようになり、新しい人の流れも見えてきたと説明した。

県内2拠点を同じ日に訪れた人の減少率(コロナ前との比較)と、au Starlink Directの通信があった場所の分布(写真:筆者撮影)

松田氏は山口を、宇宙のデータの受け口に挙げる。KDDIの前身の1つである国際電信電話(KDD)がこの地に通信所を置いた理由は3つある。インド洋と太平洋の上空にある静止衛星をどちらも見通せること、周囲を山に囲まれて電波の干渉が少ないこと、地震や台風の影響が少ないことだ。

「海底ケーブルも含めて地球上の通信というのはかなり行ってきている。山口に通信をしておけば、山口から非常にスピードの速いネットワークで日本全国をカバーできる」。松田氏はそう述べ、山口が地上側のハブになることは「理にかなったこと」だと話した。

3/4 PAGES
4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数