これまで、こうしたサービスを使うにはデジタル認証アプリを別途インストールする必要があった。統合後はマイナアプリだけで済むうえ、「iPhoneのマイナンバーカード」と「Androidスマホ用電子証明書」にも新たに対応した。実物のカードを財布から取り出さなくても、顔や指紋の認証で本人確認を終えられる。
この対応は事業者側の改修なしで有効になり、6月時点で300以上のサービスで使える見込みだ。スマホに搭載したマイナンバーカードはiPhoneとAndroidの合計で800万件を超えており、秋頃にはAndroid側の名称も「Androidのマイナンバーカード」に刷新する予定だ。
この基盤づくりの先には、本人確認の制度変更が控える。2027年4月に予定される犯罪収益移転防止法の施行規則改正で、運転免許証などの画像をアップロードするオンライン本人確認、いわゆるホ方式が廃止される見通しだ。写真の撮影では偽造した書類を見抜きにくいためで、廃止後の本人確認はICチップの読み取りか公的個人認証に絞られる。
銀行や証券会社、暗号資産交換業者は、それまでに代わりの手段へ切り替えなければならない。切り替え先には、運転免許証などのICチップを読み取る方法も残る。それでも、無償のAPIと8000万ダウンロードの配布網を持つマイナアプリは、有力な受け皿になる。説明会では、機種変更でパスキーを失った利用者の本人確認に使う動きが増えているという説明もあった。利用者の側から見れば、口座開設でもフリマでも、本人確認でマイナンバーカードを使う場面が着実に増えていく。
一本化の前に露呈したつまずき
本人確認の集約が進むほど、このアプリが安定して動くかどうかの重みは増す。その滑り出しでつまずきが出た。デジタル庁は8月27日、公式Xで一部の端末や利用環境で認証やログインが完了しない事象が起きていると告知し、シークレットモードの解除やデジタル認証アプリのアンインストールを対処法として案内した。投稿には、対処法を試しても直らないという返信が相次いだ。本稿執筆時点で、解消を知らせる続報は出ていない。
一方で、実際に使われた回数はまだ少ない。官民のサービスがカードで本人確認や署名を行った回数、デジタル認証サービスの認証件数は6月時点で累計約733万件で、8000万近い配布規模に対して桁が1つ少ない。デジタル庁はこの数字をダッシュボードで月ごとに公表している。もっとも、写真アップロードが廃止されれば、件数は制度が押し上げていく。数字より重いのは、代わりが利きにくくなるインフラが止まらずに動き続けることだ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。