交渉に関していえば、「成功したのは自分の能力のおかげだった」と考える一方で、「失敗したのは、自分ではどうにもならない要因のせいだった」など、自分のふるまいを棚に上げ、他の交渉者が無分別だからこうなったのだと決めつけたりするわけである。
なぜ自分の正しさにそこまで固執するのか
もちろん私たち人間は、誰しもなんらかのバイアスを持つものだ。それに、そうした決めつけが部分的に正しいケースもありうるだろう。とはいえ“正当化への衝動”は、自分と誠実に向かい合い、交渉がなぜ失敗したかを理解することをなんらかのかたちで邪魔するのだ。
失敗から学びを得るのを妨げるもう1つのバイアスは、“バックファイア効果”と呼ばれるものだ。自分の意見や信念と対立する情報が示されたとき、それが正しい情報だとしても、聞き入れたり検討したりせず、一歩も譲ろうとしない心理的傾向のことだ。(58ページより)
バックファイア効果は、自尊心と密接に結びついているという。だから、自分の意見を客観的に見て、「なにか問題があるかもしれない」と思ったり、「他に有効な見解があるかもしれない」と考え直したりはしない。どこまでも自分の意見にしがみついてしまうのだ。
なぜ自分の意見にしがみつくのだろう? 自分の意見を客観的に見て、何か問題があるかもしれないと思ったり、他に有効な見解があるかもしれないと考え直したりしないのはなぜか。
このことに関連し、本書では啓蒙思想家のヴォルテールの有名な言葉が紹介されている。「(人は)確信のないときは心地よい状態ではないが、確信は不条理なものである」というものだ。


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