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開始から4年半が経過したウクライナ侵攻が8月末、大きな局面転換を迎えた。
モスクワを8月25日に電撃訪問した米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官がロシアのウラジーミル・プーチン大統領の側近らに対し、ウクライナによる長距離ドローン攻撃拡大などにより、ロシアが戦争に勝つのは不可能であり、侵攻をやめてウクライナとの和平交渉に応じるよう求めたからだ。
ラトクリフ長官は、プーチン大統領がこれに応じなければ、アメリカはウクライナへの本格的な軍事支援を行うとの通告も行った。
「ロシアの勝利は不可能」と初めて伝えた
トランプ政権が戦局に関して、勝つ見込みがないとの評価をロシアに伝え、侵攻停止と和平交渉開始に応じるよう要求を突き付けたのは初めてである。
今後の焦点は、この驚くようなラトクリフ長官の通告に対し、プーチン大統領がどのように対応するか、だ。
しかし、ロシア軍はラトクリフ訪ロ直後の8月28日、キーウに対し大規模な攻撃を実施。数十人規模の死者を出すなど、侵攻をエスカレートさせており、現時点で和平に応じるような構えは示していない。
ラトクリフ長官はその後、ウクライナと欧州主要国に対し、今回のモスクワでの協議内容について正式のデブリーフ(報告)を行った。これを受けウクライナのアンドリー・シビハ外相は、9月初めにアイルランドの首都ダブリンで開催される欧州連合(EU)の外相級会議に出席して、欧州側と今後の対応を協議することになった。
25日にラトクリフ長官がモスクワで会談したのは、情報機関のツートップであるロシア対外情報局(SVR)のセルゲイ・ナルイシキン長官と、連邦保安局(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ長官。いずれもプーチン大統領の側近だ。
「軍部は正しい戦況をプーチンに伝えていない」
会談は個別に行われた。事情に詳しい関係筋が筆者に明らかにしたところによると、ラトクリフ長官は以下のような趣旨の指摘を両長官に行ったという。
「ウクライナのドローンによる長距離攻撃などにより、ロシアは大きなダメージを受けており、もうロシアは勝てない。ゲラシモフ参謀総長はじめ軍部は戦況について、プーチンに正しい情報を伝えていないのだろう。だから、君たちが伝えろ。もしプーチンが戦争終結に応じるなら、和平に向けた協議をしよう。こちらも悪いようにはしない。しかし、もし協議を拒否し、侵攻を続けるなら、トランプはウクライナ側に明確に付いて武器を供与する」
この発言が意味するところは何か。まず、プーチン大統領が侵攻を続ければ、今後トランプ政権は、相互連携を強めているウクライナと欧州の輪に明確に加わるということだ。つまり、ウクライナ・欧州+アメリカに対し、中国、北朝鮮がロシアを支援するとの対峙の構図が明確になる。
一方で、和平交渉に応じれば、プーチン大統領に対し、悪いようにはしないとの発言の意味ははっきりしないが、和平実現後も大統領としてのプーチン大統領の立場を尊重する、といった趣旨である可能性もある。
トランプ大統領にとって、今回の突然の路線変更の背景には、今年11月のアメリカ中間選挙をにらんだ、選挙戦略があることは間違いないだろう。
今年2月に始めたイラン戦争がアメリカの思惑どおり運ばず、出口も見えない中、ホワイトハウスとしては、中間選挙前に、ウクライナ侵攻をめぐる停戦を実現し、貴重な外交成果をアピールしたいところだ。


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