学ぶ気も覚える気もない同僚からは、「わからないから代わりにやってね」という気持ちが透けて見えるという。また係である森田さんだけでなく、比較的パソコンスキルがある若い先生もよく質問されるそうだ。
「僕らが代わりにやってあげた方が早いけれど、それでは本人のスキルアップにも成長にもつながりません。そこで代わりにやってあげるのではなく、やり方を教えるようにしています」
GIGAスクール構想が始まった頃、学校現場には「とにかくデジタル機器を使いましょう」という空気が充満していたが、最近では「必ずしも使わなくていい」というフェーズに入っていると森田さんは感じている。
「私自身、すべてデジタルでやるべきだとは思いません。紙のほうがいい場合もありますから、うまく使い分ける必要はあります。けれど、メールで一斉送信すれば済む内容でも、わざわざ紙に印刷して回覧板で回す人もいますね。『デジタルは使いづらいから』の一点張りです」
すぐに人に聞いて、覚える気がないのは年上の教員が多いと森田さんは指摘する。
「年齢にかかわらず、新しいことを拒否するのは人間の本能なんだろうなと思っています。年配の教員の中にも、新しいものに挑戦する人はいますし。ただ、若いときは『知らないこと』『やったことがないこと』が多いので、新しいことを受け入れられる人が多い気がします。
一方、年齢を重ねるにつれて、『初めてのこと』は少なくなっていきます。そのため、新しいことに飛び込みにくくなるのもわかりますし、『やらないで済むのであれば今まで通りにしよう』となるのでしょう」
受け入れなくてもデメリットがない環境
新しいシステムやツールを取り入れたほうが、今より仕事の効率が上がる。それがわかっていても、新しいことを取り入れる精神的・肉体的余裕がない。覚える時間もない。だから、少しぐらい効率が悪くても、今まで通りにしていたほうが自分のストレスが少なくて済む──。
効率と非効率の間に横たわるジレンマとも言える問題だが、この「非効率でも自分のストレスが少ない方法を選ぶこと」が、許される風土が学校にはあると森田さんは指摘する。
例えば、民間企業であれば、会社が「業務効率化のため今後はこのシステムを導入する」と判断すれば、そのシステムを使って業務を遂行することになる。しかし、学校という場では、新しいツールや新しいやり方を受け入れなくても、業務が進んでしまう。


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