(後編:『「万が一があったら…」パンダ用人工ミルク開発を決めた日本企業の舞台裏 「クマ、ゾウ、アザラシ…」"ニッチなミルク"を作る理由』)
ペットが家族やパートナーとしての存在感を強める昨今、2026年度の国内のペット関連総市場規模は約1兆9000億円を超える予測で、右肩上がりで成長を続けている。そんな中、ペットフードのパイオニアとして今年55周年を迎えたのが森乳サンワールドだ。同社は犬猫用のミルクやフードをはじめ、パンダやゾウなど動物園・水族館の展示動物用の人工ミルクを製造・販売している。
創業以来の人気商品である犬猫用ミルクの特徴とは、また55年の歴史の中でペットフード市場はどう変化してきたのか。営業部リーダーの小島有紀さんと、生産業務部リーダーの丸山千尋さんに話を聞いた。
犬と猫の母乳を再現した「人工粉ミルク」
森乳サンワールドは1971年、森永乳業のペットフード事業部門として設立。高度経済成長で生活に余裕ができたことでペットブームが起こり、専用フードやミルクを与える文化が広がっていた時期だった。
「森永乳業が育児用のミルクで培った技術を生かして当社で研究開発を行い、創業年に犬用フードの『ワンラックミール』と、犬猫用の人工粉ミルク『ワンラックミルク』を発売しました。改良を重ねて現在も販売している『ワンラックミール』は、栄養価が高くカロリー控えめで、手頃な価格が特徴です。根強い人気があり、特に秋田犬など日本犬のブリーダーさんからご支持いただいています」(小島さん)
看板商品である人工粉ミルクも、他社にない特徴を持つ。哺乳類の乳は動物の種類によって適した成分組成になっており、それぞれ内容が異なる。そこで同社の人工粉ミルクは犬と猫の母乳成分を分析し、100種類以上の原料を配合して栄養組成を再現。より母乳に近い栄養を摂取することができるのだ。
また、犬や猫はもともと乳に含まれる乳糖を分解する酵素が少ないため(乳糖不耐症)、牛乳を与えるとお腹を壊しやすい。そのため市場には、乳糖の成分を抜いた牛乳や、消化吸収がいいといわれるヤギミルクなど、たくさんのペット用ミルクが販売されている。
「乳糖は悪いものというイメージがありますが、元来、犬猫の母乳にも含まれている成分であり、実はお腹の中の善玉菌を増やしたり、ミネラルの吸収を促進するメリットがあります。そのため、弊社では原料の牛乳に含まれる乳糖を、犬猫の母乳と同等かそれ以下の量に調整して使用しています。そうすることで、お腹を壊さずに必要な栄養を摂取できるんです」(小島さん)


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