恥を忍んで、いかにぼくがダメな医者だったかを書いてみよう。
開業してわりとすぐに5歳の男の子が風邪で受診した。聴診器を胸に当てて、口の中を観察して……ん、ところがその子は歯をくいしばって頑として口を開けない。
ぼくは腹が立ってしまった。じゃあ、なんでクリニックに来たの? 診察を受けたくて来たんじゃないの? 大学病院だったらあり得ないよ。
ぼくが不機嫌になったので、保護者は涙ぐんでしまった。ぼくはその涙を見て、めちゃめちゃ申し訳ない気持ちになった。
変わらなくてはいけないのは患者家族の方ではなくて、ぼくの方だ。このことは今になっても忘れられない。あれから20年経ったが、もし再会することがあったら謝りたい。
「今日はどんな患者が来るんだろう?」と緊張の毎日
開業医はやってみると想像以上に難しかった。毎朝、家を出る前に心臓がドキドキするようになった。
今日はどんな患者が来るんだろう? 質問に答えられなかったらどうしよう? 何でこんなに緊張するのかな。大学病院時代は外来診療が好きだったのに。
そうか、大学で診ていた患者は、全部、小児がんとかぼくが治療した患者ばかり。つまりどんな質問にも答えられるし、患者家族との間で(入院治療の期間を経て)すでに信頼関係ができている。つまり何の不確実性もない。
その点、開業医として働くとどんな患者さんがやってきて、どんな質問が飛んでくるか、わからない。不確実性の毎日だから不安なのだろう。


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