ChatGPTやGeminiのような生成AIは、ネット上の膨大なデータを学習して「統計的に最もありそうな答え」を出力します。要するに、何が一番多く書かれているかによって、回答が決まってくる側面があるわけです。
それに目をつけたのが、ロシアです。「ロシアがウクライナに軍事侵攻したことは正しかった」という内容の論文や記事を大量にネット上に発信し、AIに読み込ませることで、AIの回答をロシアに都合のよい方向に変えようとしていると言われています。NHKが2025年3月に行なった実験では、複数のAIに特定のテーマについて尋ねたところ、そのうちのいくつかがロシア寄りの回答をしたことが確認されたといいます。
「池上彰に聞く」より「AIに聞く」時代が来るのか
私はよく冗談でこう言います。「みんなで『日本の首都は大阪だ』と大量に書き込んでいけば、そのうちChatGPTが『日本の首都は大阪だ』と言うようになるかもしれない」と。これは冗談ですが、原理的には完全に冗談でもない。分母となるデータを組織的に書き換えれば、AIの「常識」を書き換えることができてしまう。
「池上彰に聞く」のではなく「AIに聞く」時代が来たとき、そのAIが信頼できる情報を提供しているかどうか。これは、極めて重大な問題です。私たちがAIの答えを「正しい」と思い込む前に、まず立ち止まって「本当にそうだろうか?」と疑う力、すなわち「メディアリテラシー」がいっそう強く求められているのです。
実は、こうした偽情報やAIの出力する偏った情報に騙されやすいのは、若者よりも中高年世代です。国際大学の准教授らの調査(2023年)によれば、政治関連のフェイクニュースを見抜けた割合は、20代、30代が約20%前後だったのに対し、50代は6.5%、60代は8.5%と、中高年層が最も少ないという結果が出ました。
若い世代は、生まれたときからデジタル機器に触れていて、SNSのアルゴリズム(計算手順)の仕組みをある程度理解しています。しかし、デジタル教育を受ける機会がなかった中高年はそうはいきません。
定年退職して時間ができ、ネットサーフィンを始めた結果、自分が検索したり「いいね」を押したりした情報ばかりが表示される「フィルターバブル」や、似たような意見が増幅し合う「エコーチェンバー」という現象に陥ってしまうのです。
そして、「ネットにはこういう意見ばかり表示される。だから世の中のみんなもこう思っているんだ」と思い込み、悪意あるフェイクニュースを、ある種の善意から「みんなに知らせなきゃ」と拡散してしまうケースが後を絶ちません。



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