これは偶然ではありません。当時の人々は、電灯やエアコンに囲まれた生活ではなく、日の出とともに起き、日没とともに休むという、自然のリズムに近い暮らしをしていました。つまり、体内時計が太陽の動きとしっかり同期していた時代だったのです。
ヒトの妊娠期間は、受精から出産まで平均約38週間。このことを踏まえて考えると、1~3月生まれが多いという事実は、妊娠が起こりやすかった時期が春から初夏(4~6月)だったことを意味します。
ちょうどこの季節は、日照時間が急速に長くなり、気温が安定し、体調を崩しにくい、農作業や生活のリズムが整いやすい、といった条件が重なる時期です。つまり、体内時計にとっても、生殖にとっても「追い風」の季節だったと考えられるのです。
この出生の季節リズムは、第2次ベビーブーム以降、次第に目立たなくなっていきました。
理由は明確です。夜でも明るい照明、冷暖房による季節感の喪失、シフトワークや夜型生活の広がり、こうした環境の変化によって、私たちの体内時計は「太陽」よりも「社会の時計」に縛られるようになったのです。その結果、妊娠・出産に表れていた季節のリズムも、統計上は見えにくくなっていきました。
日光を味方につける、という発想
ネズミの実験結果と、こうした人類の過去のデータを重ね合わせると、一つの共通点が浮かび上がります。それは、「日照時間の長さ」が、生殖のリズムと無関係ではないということです。
もちろん、妊娠は日光だけで決まるものではありません。年齢、体調、パートナーとの関係、さまざまな要因が絡み合います。それでも、日光を浴びる生活が体内時計を整え、妊娠に向けた"土台"を整えることは、科学的にも十分に理にかなっています。
筆者らの研究グループでは、こうした考え方を「概日リズム・タイミング戦略」と呼び、妊活や女性の健康を支える新しい視点として提案しています。
特別なことをする必要はありません。たとえば、朝起きたらカーテンを開ける、できるだけ午前中に外に出る、太陽の光を「意識して浴びる」。それだけでも、体内時計は確実に反応します。
妊娠しやすい体づくりは、無理にがんばりすぎることではなく、自然のリズムを味方につけることから始まるのかもしれません。太陽は、私たちの体にとって、今も変わらず最も信頼できる"合図"なのです。



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