さて、その大事な餌資源であるゴミがあさりにくくなったわけだが、どっこい、カラスは簡単にいなくなったりはしない。例えば、私の住んでいた辺りを縄張りにしていたハシブトガラスのペアだ。
ダストボックスが導入された時、最初の対応は「餌場を変える」ことだった。ガードの甘いゴミ集積所を集中的に狙うようになったのだ。これに伴って縄張りの境界線も少しズレた。
次が、ゴミ以外の餌の利用拡大である。と書くと「スズメやツバメを狙うのか?」と言われそうだが、違う。もっと簡単な餌がある。それも路上に。
地域猫の餌である。
地域猫の餌が、ゴミにありつけなかったカラスの朝食に
当時、うちの近所には地域猫が少なくとも4匹、ひょっとしたら5匹いた。どれも不妊手術をした「さくら耳」だった。
そして、猫に給餌している人も何人かいて、みなさんがちょっと多めに置いてゆく。その結果、朝になっても餌が残っていることがよくあった。これがカラスの朝食になったのだ。
冒頭に書いた、夢中で猫缶を食べているカラスを見たのはダストボックス導入の翌週だった。おそらく、アテにしていたゴミがあされない中、やっと見つけた良い餌だったのだろう。
それまでは「あんな人通りの多い歩道の、アパートの真ん前でわざわざ食わなくても……」と警戒していたのだろうが、背に腹は代えられないというわけだ。
他の研究者からも、カラスが猫や犬の餌を食っていたという話はよく聞く。
また、こういった給餌を利用するのはカラスに限らない。この30年ほどの間に北海道・苫小牧周辺にカササギが定着したが、安定同位体比分析から、ペットフードが重要な餌資源であったことがわかっている。このカササギはおそらくロシアから来た個体群だが、勝手の違う異国でも季節を問わず手に入る餌として、ペットフードはうってつけだろう。
同様に、東京周辺で野生化しているワカケホンセイインコも、野鳥のための餌台が重要な餌場になっている可能性が指摘されている。ホンセイインコは果実や種子類を食べるのだが、公園の樹木の果実の他、餌台のヒマワリの種などを利用しているようだ。


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