行政や防衛といった国家の中核領域にもAIの導入が進む中で、その基盤を海外企業に全面依存することへの不安が各国で高まっている。加えて、自国民のデータが国外で処理されるというデータ主権の問題、供給が突然絶たれかねない地政学的リスク、自国の言語や文化への理解が薄いという課題もある。そのため各国で、自前のAI基盤を持つ「ソブリンAI」の開発が進む。
実際、日本ではデジタル庁が主導する形でガバメントAI「源内(げんない)」が実装されつつあるほか、富士通(6702)が防衛装備庁から、指揮官の意思決定を支援する「防衛用マルチAIエージェントシステム(AI幕僚)」の研究を受託した。
セキュリティ業界では攻撃も防御にもAI
AIの影響を大きく受けるのが、「サイバーセキュリティー」業界だ。通常のランサムウェア攻撃やマルウェアによる被害が継続したことに加え、AIを悪用した詐欺(フィッシング)攻撃や脆弱性探しの自動化など、サイバー攻撃が一段と高度化・巧妙化しつつある。
そのため業界では、「AIを活用した防御」と「AIガバナンス」が大きなトレンドとなっている。攻撃側がAIを活用するならば、防御側も、開発や運用、脆弱性探しや攻撃の予兆察知にAIを活用する、といった具合だ。またAIを安全に利用するための制御・可視化・統制といった「AIガバナンス」への需要も、中長期的に拡大すると見込まれている。
AI活用と並行して進むのがプラットフォーム化だ。大手は1つのソリューションであらゆる脅威に対処する「統合型プラットフォーム」への転換を進めており、外資系上位ではパロアルト・ネットワークス(PANW)がサイバーアークを、グーグルを傘下に置くアルファベット(GOOGL)がウィズをそれぞれ4兆~5兆円で買収し、不足する領域を補強した。顧客の囲い込みが加速している。
ソフトウェア(SaaS)業界でも大きな変化が見られる。2026年初に起きた「アンソロピックショック」では、AIがSaaSの役割を代替するのではないかという懸念から、多くのSaaS銘柄の株価が急落した。生成AIの進化によって顧客が自前のAIエージェントで代替できるようになり、ユーザー数に応じて課金するモデル(シート課金)が毀損されるとの見方が広がったことが背景にある。
ただ、SaaSが提供してきた価値は単なるツールではない。各社は長年にわたって顧客データを蓄積し、現場の業務に即したルールやワークフローを丁寧に整備してきた。これらをAIによって内製化するのは容易ではない。むしろSaaS各社は、蓄積してきたデータやルールとAIエージェントを組み合わせることで、単に作業を効率化するツールから、業務を自律的にこなす仕組みへと進化させている。
一方、システム開発業界は好調を維持している。25年度は企業のDXに対する強い投資意欲に支えられ、富士通、NEC(6701)、野村総合研究所(4307)などの大手が軒並み過去最高益や大幅な増収増益を達成。日本のIT人材のトップ層を抱え込み、企業のIT実装に不可欠な存在となっていることが、AI時代にあっても強みとなっている。この好調な事業環境を狙い、NTTデータグループやSCSKが親会社による買収で上場廃止となるなど、業界再編も続く。


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