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〈米トランプ政権が制裁〉ICCの赤根所長が1年前に語っていた「もし私が制裁対象になれば…」その甚大な影響

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赤根智子氏は2018年に国際刑事裁判所判事を経て、24年3月から所長を務める(撮影:尾形文繁)

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アメリカのトランプ政権は8月18日、国際刑事裁判所(International Criminal Court、ICC)の赤根智子所長らを制裁対象に指定すると発表した。これに対し、EUや国連などはトランプ政権への批判を強めている。世界規模の戦争犯罪に向き合ってきたICCが存続の危機にさらされる中、これまで一貫して赤根氏が訴えてきたこととは。2025年9月のインタビューを再掲する。

世界におけるICCの役割

ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルによるガザへの攻撃は、国際社会の無力さを浮き彫りにした。ICCの裁判官としてロシアのプーチン大統領に逮捕状を出し、ロシア当局から指名手配を受けた赤根智子氏。今、日本人初の所長として、米トランプ政権の制裁によって存亡の危機に立たされたICCを守ることの重大さを訴える。

──ICCは、2023年3月にはプーチン大統領に、24年11月にはイスラエルのネタニヤフ首相に、戦争犯罪などの容疑で逮捕状を出しました。

ICCの仕事は、戦争犯罪や人道に対する犯罪などを犯した個人を国際法にのっとって裁くことだ。どのような状況でも、法と証拠のみに基づき判断を下す。政治的な配慮はなく、特定の国やグループを敵視しているわけでもない。

マルチラテラル(多国間主義的)な国際機関や組織が機能しにくい中で、ICCは世界における「法の支配」の最後の砦として機能している。そのことは人類の希望にもなっている。

赤根智子(あかね・ともこ)/国際刑事裁判所(ICC)所長。1956年愛知県名古屋市生まれ。80年東京大学法学部卒業。82年検事任官。法務省法務総合研究所所長、最高検察庁検事などを歴任。2018年国際刑事裁判所判事。24年3月から現職。(撮影:尾形文繁)

──ただ、ネタニヤフ首相への逮捕状発付に反発したトランプ政権が、検察官や裁判官らICC関係者への制裁を行っています。

最初に制裁対象となった検察局トップ、カーン主任検察官は米国への入国ができなくなった。オランダ以外の銀行口座も使えない。検察局の捜査にも多大な影響が出ている。追加制裁を受けた裁判官らの場合も制裁内容はほぼ同じだ。

二次的な制裁対象になることを恐れ、ICCとの取引を停止する企業も出始めている。さらに制裁を認めた大統領令はいつでも一方的に対象範囲を広くできる内容だ。より強い制裁が発動されれば、ICCの組織機能はマヒし、捜査や裁判もできなくなる。とくにICTシステムが維持できなくなると、保護している被害者や証人たちに危険が及ぶ心配もある。拘束している被疑者や受刑者を釈放せざるをえなくなるかもしれない。ICCは潰れたも同然になる。

ICCがなくなれば、どのような世界が来るのか。ICCで働き、裁判や捜査の実態を理解しているからこそよくわかる。裁判所が1つ潰れたという話では済まない。

──法ではなく力が支配する世界になると。

勝った側が負けた側を裁く世界に逆戻りするということだ。戦争における市民への攻撃や、市民への組織的な攻撃が犯罪と見なされないことにもなる。ICCは、第2次世界大戦終結後、長い時間をかけ、さまざまな苦労の積み重ねによって誕生した。現在の国際情勢を考えると、同じような裁判所は二度とつくれないだろう。

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