真相はともかく、目指したのは「長いパン」だった。のっぽパンの長さは34センチ。パンを焼く50センチ×38センチの天板に、できるだけ効率よく並べられるよう考えた結果、この長さに決まったそうだ。ヒットを狙って計算されたというより、工場の設備事情が生んだサイズだった。1枚の天板で、のっぽパンを7本焼くことができる。
発売当時、のっぽパンを製造していたのは、静岡県沼津市にあるヌマヅベーカリーという会社だった。パンだけでなく、和菓子や団子まで手がける食品メーカーだ。同社は1999年、エヌビーエスへと社名を変えている。取材に応じてくれたのは、当時エヌビーエスの子会社で、現在はのっぽパンの販売元でもある株式会社バンデロールの取締役管理本部長 野田歩氏だ。
「パッケージに描かれたキリンのキャラクターについては、細長いパンのイメージに合わせて、デザイン担当の社員が選んだと伝わっています。でも、隣の三島市にある公園、『楽寿園』で飼われていたキリンがモデルとなったという説もあるんです」
楽寿園には今も「どうぶつ広場」がある。1978年当時はキリンが飼育されていたようだ。
のっぽパンのキリンには正式な名前はなく、性別も不明で、首から下のデザインも存在しない。設定が定まらないまま半世紀近く経った、非常にミステリアスな存在だ。
だが、その素性の曖昧さは、自在に姿を変える余白になっている。
「牛乳味なら牛の被り物を頭にのせ、ピーナッツ味なら落花生を口にくわえるなど、味やコラボごとにビジュアルを変えています。(デザイン会社に)自由に遊んでもらってるんです」と楽しそうに笑う野田さん。
愛ゆえの激怒…私ののっぽ事件
発売後すぐに、のっぽパンはヌマヅベーカリーの看板商品に成長した。学校給食のパンをはじめ、さまざまなパンを手がける中でも、一番の売れ筋だったという。「きょうだいで分けて食べるのにちょうどよい長さ」という声もあったようだ。


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