期待外れに終わった「元祖・アクティブシニア」
ちょうど私が博報堂で働き始めた2000年代初頭、広告業界では「アクティブシニア」というマーケティング用語が爆発的なトレンドになり、連日のようにクライアントへ提案されていました。
「団塊世代」(1947〜1951年生まれ)が退職を迎えるにあたり、高齢者人口の爆発的増加とともに巨大なシニア市場が誕生する。時間とお金と健康に余裕のある元気な高齢者たちが、豪華客船クルーズや海外旅行を楽しみ、趣味に資金を投じる──そんなバラ色の未来予測が、あたかも既定路線のように語られていたのです。
当時、少子化が急速に進行し、2005年には、日本の総人口が戦後初めて前年を下回るなど、人口減少社会のカウントダウンに怯えていた日本の産業界にとって、この「アクティブシニア市場」は、唯一の希望の光でした。
しかし、蓋を開けてみれば、現実は、想定ほど「アクティブ」にはなりませんでした。拙著『「シニア」でくくるな!』(日経BP)で引用した調査結果によると、60代~80代の外出頻度は「ほとんど毎日」が約半数の48%に達しているにもかかわらず、外出目的は「日常的な買い物など」が7割以上と圧倒的でした。
次いで、大きく差が開いて「通院」「仕事」が挙がる程度。日常の移動範囲はスーパーと病院の往復程度であり、期待されたアクティブシニア像とは大きくかけ離れた実態だったのです。
つまり、「市場の人口規模は大きいのに、個人の消費がちっとも活性化しない」という、ねじれ現象がこの20年間ずっと続いてきました。その最大の原因は、日本人の根強い「貯蓄志向」です。「老後の不安」から、高齢者層が抱える莫大な個人金融資産は、タンスや銀行口座に凍結されたまま、市場へ還流することはありませんでした。


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