出発地点に置いてきたキャリーケースも運び込まれていた。何だ、手ぶらでラクダに乗ってよかったのか。
ただ、直前に脱がされたダウンコートが見当たらない。スタッフに聞くと、「今はごった返しているから、後で部屋に届ける」と言うので任せることにした。
サハラ砂漠で“ぼっち飯”
そうして夕食。ここで再び試練に見舞われた。ラクダ乗りのグループごとに席が割り振られ、イタリア人カップル2組と私に1つのテーブルが用意されていた。ラクダに乗るだけならまだしも、食事の時間を共にするのは無理。イタリア語での会話になることは火を見るより明らかだし、これはさすがに心が折れる。
イタリア人たちはまだ来ていなかったので、レストランのスタッフに「一人席を作って」と懇願し、小さなぼっち席を用意してもらった。憐れまれたのか、有料の1.5リットルの水をプレゼントされた。別にいいんです、一人ご飯には慣れてるので。
早く快適な部屋に戻ろうと急いで食べていると、さっき砂漠で言葉を交わした白人女性の一人がやってきた。
「私たちのテーブルで一緒に食べようよ」
グラスと皿を持って彼女たちのテーブルに移動し、空いている席に座らせてもらった。話しかけてくれたティナはデンマークで働くドイツ人。同じテーブルにはイスラエル人、フランス人もいた。
食後は皆でキャンプファイヤーを囲み、音楽に合わせて踊った。女性4人とラクダ引きで丘陵を登って光の届かない場所に行き、星空を眺めた。そこはぎりぎり電波が入る場所のようで、何人かのスタッフがスマホでサッカーの試合を見ていた。
彼らの日常と旅人の非日常が同じ場所にある。


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