ガイドは元茨城の塗装工
ガイドのハッサンが、私を見るなり「ジャパニーズ?」と聞いてきた。前日のガイドは「フィリピーナ?」だったのに、なぜ彼には分かるのだろう。うなずくと、彼は突然日本語に切り替えた。
「私、30年前に茨城で9年間塗装工の仕事してたのよ」
こんなところでなんという偶然。
ハッサンの説明で、今いる場所がトドラ渓谷の近くだと分かった。モロッコの秘境的なエリアなのに、なぜか日本人宿が2軒あり、バックパッカーの間では非常に有名なトドラ渓谷。ここだったのか!
日本人オーナーが作る和食がおいしくて、つい居ついてしまう――。そんなブログを何本も読んで、世界一周に出る前に宿にメールしてみたが、連絡がつかなかった。
ハッサンに聞いたら、やっぱりよく知っていた。一人は日本に帰り、宿は不定期営業になっている。そしてもう一人については、「コロナ禍で日本に帰国しているときに病気で亡くなったんだよ」と教えてくれた。残された家族は家を引き払い、カサブランカに移ったという。
「僕の親戚が家を貸していたから、よく知っているんだ」


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