まず押さえておきたいのは、現在のアニメ業界が「おもしろいからアニメ化される」という単純な世界ではなくなっている、ということです。
どの市場で戦うのか。誰に届けるのか。どこで話題化させるのか。音楽やグッズ展開との相性はいいか。SNSでバズりやすいか。そして何より——「この作品は、海外で配信の値段がつきそうか」。
企画の会議室では、こうした問いが真っ先に飛び交います。つまり、作品がアニメ化されるのには明確な理由があり、感情や情熱だけではなく、数字と経済合理性によって判断されているのです。これは少し冷たい話に聞こえるかもしれません。しかし、制作現場を取り巻く「お金の規模」を知れば、納得していただけるはずです。
深夜アニメ1クール(12〜13話)の総制作費は、平均で3億5000万円規模にのぼります。しかも、その大半は放送が始まる前に必要になります。つまりアニメ制作とは、視聴者の反応をまったく見ないうちに3億円超を投じる「先行投資型」の事業なのです。これだけの金額が動く以上、「直感でおもしろそう」という理由だけで企画を通すわけにはいきません。
収益の9割は「日本の外」から来ている
では、その3億5000万円は、どこから回収するのでしょうか。
かつての深夜アニメの収益モデルは、国内の円盤(DVD/Blu-ray)売上が中心でした。ファンが高額なディスクを購入することで、制作費を回収していたのです。しかし、その「円盤バブル」はとうに終わりを迎えました。代わって台頭したのが、Netflix、Crunchyroll、Disney+、Amazon Prime Videoといった、サブスクリプション型の配信サービスです。定額で大量のアニメを視聴できるこの仕組みが、アニメの収益構造を一変させました。


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