1952年1月、沖津はコニシへ入社、すると翌2月には、ビニルエマルジョンを主成分とした製本用の合成接着剤「ボンドBシリーズ」の開発に成功する。さらに同年の夏には、セメント袋向けの速乾型接着剤「CFシリーズ」も完成させた。
当時、何かをくっつける道具といえば、でんぷん系ののりか、動物の骨や皮などを煮出して精製したにかわぐらい。でんぷん系は接着力が弱く、にかわを使いこなすには職人技というべき技術が必要だ。
ボンドは、この市場の穴をうまく突くことになる。
53年、製本用接着剤のサンプルを受け取った新聞記者から、「折れた下駄の歯の修理にちょうどいい」という思いがけない声が寄せられた。これをきっかけに木材用へ改良した「ボンドCHシリーズ」を開発。57年には一般家庭向け商品として発売し、「ボンド木工用」は日本を代表する家庭用接着剤へと成長していった。
「ボンド木工用」は、ロングセラー商品となった。しかし、戦後復興から高度経済成長へと向かう日本では、家庭以上に巨大な市場が生まれようとしていた。
高度経済成長が、ボンドを建設現場へ押し上げた
50年代後半から70年代にかけて、日本では戦後の住宅不足の解消や都市部への人口集中を背景に、大規模な住宅建設が進められた。55年に日本住宅公団(現・UR都市機構)が設立されると、団地をはじめとする集合住宅が全国各地で建設され、高速道路や新幹線などの社会インフラ整備も急速に進んでいった。
大量の建物を、短期間で、均一な品質で仕上げる――。建設現場では、これまで以上に施工の効率化が求められるようになった。コニシは時代の変化を見据え、建築・工業向け接着剤の開発を進めていく。
60年代、コニシは建設ラッシュにわく国内市場へ、合成ゴム系接着剤「速乾ボンド」を投入。日本住宅公団(当時)の指定接着剤にも採用され、建築現場の施工用接着剤として存在感を高めていく。
乾燥が早く、現場で扱いやすい接着剤は、内装材や建材の施工効率を高めるうえで大きな意味を持った。釘やビスだけに頼らず、接着剤を併用することで、施工方法の選択肢は増えていった。


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