これは日本の著名な食物史学者である篠田統(しのだおさむ)氏の説です(※2)。篠田氏の主張の根拠を見てみましょう。
「豆が腐っている」からではない?
『唐國史補(とうこくしほ)』という、中国・唐代の逸話を集めた本の中では、穆寧(ぼくねい)の4人の子ども「賛・質・員・賞」が、それぞれの気質にちなんで長男から順に「酪・酥・醍醐・乳腐」と例えられたという話が載っています(巻中)。
そして、四男は「最も(ぼんこ:かたくなで融通が利かないこと)」だから「乳腐」なのだと書かれています。
ここに出てくる「酪・酥・醍醐」はすべて発酵乳製品であることから、「乳腐」も同じく発酵食品であったのでしょう。また、それが「最も凡固」という人の性質に対応させられていることから、乳腐はチーズのような固形の発酵食品であったのではないかと推測されます。
篠田氏はこのような推測をもとに、豆でできた固形の「チーズ」のような食品だから、〈とうふ〉は「豆腐」と名付けられたのだと考えるわけです。断定はできませんが、私にはこの説が最も説得力のある説明に思われます。
昔から物の名や語源については、さまざまな時代の人がさまざまな説を述べています。物が名づけられた理由は、それだけ興味をかきたてられやすく、そして人に話したくなるものなのでしょう。
※2 篠田統「豆腐考」『全集 日本の食文化 第三巻』、雄山閣出版、1998年



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