さて、このように高校が頭を抱える「総合型選抜ブーム」。そこには、実際の数字以上に「総合型選抜が拡大している」というイメージが拡散されてしまっている。その背景には、受験産業側の切実な事情がある。
少子化によって浪人生も減り、一般選抜対策ビジネスは先細りが避けられない。そこで多くの予備校・塾が新たな収益源として目をつけているのが、総合型選抜の志望理由書対策だ。
新規参入のスタートアップの推薦塾も多い。志望理由書対策は教えるのに学力が必要なく、明確な正解も存在しないため、参入する事業者にとってもハードルが低い。広告費を投じて積極的な宣伝を行う企業もあって、総合型選抜が「大幅」に拡大という印象が強まる。「難関大でも総合型選抜は大幅に拡大している」「一般選抜は枠が狭まり激戦だから総合型選抜が有利」という実際の入学者データとはかけ離れたイメージだけが独り歩きしていく。
SNS上でこうした情報が拡散されると、保護者は「うちの子も逆転合格できるかもしれない」という期待を抱きやすくなる。
大学受験に勝つには「コツコツ努力」しかないという事実
大学受験の対策は、毎日コツコツ勉強を積み重ねるしかない。難関大の学校推薦・総合型選抜を受けたいなら高校1年から定期テストを頑張り、評定平均値を上げていく必要がある。一般選抜対策も日々の学習の積み重ねが必要だ。
今も昔も変わらない。“地味な事実”よりも、「逆転合格できる」「学力がなくても活動実績があれば難関大に入れる」という夢のある情報のほうが、生徒や保護者の目に入りやすい。
こうした情報を真に受けた生徒が、本来必要な学力の積み上げをやめ、志望理由書や課外活動の対策に専念してしまい、結果として大学受験に失敗する——そうした例が、進学校の現場でも確実に増えている。
総合型選抜そのものが悪いわけではない。しかし、実際の枠の狭さ、評定平均値が重視される実態を正しく理解せず、「楽に早慶に入れる入試」という誤った期待だけで飛び込んでしまうことには、強く警鐘を鳴らしたい。



