有料会員登録 東洋経済オンラインとは
キャリア・教育

「ああ、東大を出てもこれか」——東大卒・外資系投資銀行で年収1100万円の男性を"刺しゅう屋"へ導いた「人間を忘れた夏」

6分で読める
「東大卒・年収1100万」の仕事を辞め、刺しゅうを始めた男性の物語です(写真:「北区の刺しゅう屋」Webサイトより)
  • 田中 優輝 Take Risk代表・「北区の刺しゅう屋」運営
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

東大も、会社名も、研修の成績も、その瞬間には何の保証にもなりません。

組織には組織の事情があります。市場があり、業績があり、組織を守る判断がある。それを感情だけで否定することはできません。

でも、私はその日、はっきりと見てしまいました。

組織は、「代わりはいくらでもいる」の前提に作られている。

この仕事、自分じゃなくてもよくないか

Xデーのあと、私の中に一つの問いが残りました。

この仕事は、自分でなくてもいいのではないか。外銀で働きたい人は山ほどいる。私が明日いなくなっても、誰かがすぐに席に座る。

その人もエクセルを使える。パワポも直せる。英語の議事録も取れる。それで案件は進みます。

私の名前がなくても、組織は止まりません。

組織としては正しい設計です。大きな会社は、そうやって成り立っています。でも、私はそこに長く立っていたいと思えませんでした。

田中 優輝(たなか・ゆうき)/1999年秋田県生まれ。東京大学経済学部金融学科卒業後、外資系投資銀行に入社するも約9カ月で退職。2024年、株式会社Take Riskを創業。「北区の刺しゅう屋」を立ち上げる。刺しゅうもアパレルも未経験のまま、家賃7万円の4畳半とミシン1台から製作を開始。世界的なブランドに育つまでの挑戦と過程をSNSで発信し続けている(写真:「北区の刺しゅう屋」Webサイトより)

刺しゅうを始めてから、私は逆の怖さを知りました。

私が止まると、新作が止まる。私が判断しないと、次の一歩が遅れる。

外銀では、私がいなくても案件は進みました。いまは、私がいないと何も始まりません。

怖さの種類が、変わりました。

肩を叩かれる怖さではなく、頭を動かさないと何も生まれない怖さ。

私はそちらを選びました。自分の生き方に納得できているかどうか。それが、私のものさしになりました。

『東大卒、年収1100万をやめて刺しゅうをはじめたワケ 冷めたまま働きつづける前に』(世界文化社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

キャリア・教育

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数