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キャリア・教育

「ああ、東大を出てもこれか」——東大卒・外資系投資銀行で年収1100万円の男性を"刺しゅう屋"へ導いた「人間を忘れた夏」

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「東大卒・年収1100万」の仕事を辞め、刺しゅうを始めた男性の物語です(写真:「北区の刺しゅう屋」Webサイトより)
  • 田中 優輝 Take Risk代表・「北区の刺しゅう屋」運営
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その日の朝、空気が少し違いました。

人事の方がフロアに来て、ある先輩の肩を軽く叩きました。

「ちょっと、別室に来ていただけますか」

その十秒前まで、その先輩はエクセルで作業をしていました。明日のクライアント用の資料を作成中に、肩を叩かれた瞬間、先輩の手が止まりました。

パソコンは、開いたままでした。先輩は別室へ歩いていきました。フロアには、戻ってきませんでした。

外資系金融機関では、その日のうちに社内システムへのアクセスが遮断されました。荷物は後日、自宅へ送られます。

本人が戻る場所は、もうありません。

「ああ、東大を出てもこれか」

映画でしか見ないような場面が行われるのを見て、思ったのです。

「ああ、東大を出てもこれか」

ビルから出るルートも、いつものエレベーターではありません。

午後には、事務的な連絡が回ります。

「〇〇さんは、本日付でチームを離れます」

それで終わりでした。

挨拶もありません。花束もありません。最後に一言、という時間もありません。

その日、消えたのは1人ではありませんでした。

ベテランの上司もいました。昼に大事なミーティングを控えていた人です。

午前中まで資料を読み込んでいました。人事が来て、いなくなりました。午後のミーティングには、別の人が出ました。

実は、私の同期も、このXデーにひっかかり退職させられました。入社して半年。同期の中でも、かなり努力していた人です。

東大に入った。就活を勝ち抜いた。外資系投資銀行に入った。朝から夜中まで働いた。ショートカットを覚えた。数字をそろえた。

フォントを直した。それでも、ある朝、肩を叩かれたら終わる。

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