直接接触を避けるのは、人畜共通感染症の予防のためだ。また、道路上で餌をあげないのは、自転車や車による事故を防ぐためである。さらに、虐待事件後は関係者との情報共有を密にし、必要に応じて専門家の意見を聞きながら、異変の早期発見に努めているという。
今のところ、うさぎへの餌やりを制限する内容はルールに盛り込まれていない。かわいいうさぎに餌をやることが、この島の最大の楽しみだ。しかし、この島を訪れる人たちがルールを逸脱した楽しみ方を続ければ、平和なうさぎの島の風景が保てなくなるところまで来ている。
休暇村大久野島では、宿泊客にうさぎだけではない大久野島の姿を伝えていると、土居さんは言った。
「お客さまには、島内に毒ガス遺構があることをご案内しています。毎朝の『お散歩会』では30分くらい一緒に歩き、島の自然や戦争遺構などについて話します」
2022年から活動している一般社団法人「竹原観光まちづくり機構(竹原DMO)」は、竹原市・竹原商工会議所・竹原市観光協会の3者で構成する法人だ。
竹原DMOの事業課主任、川田直弥さんは言う。
「9割の人がうさぎを目的に大久野島を訪れます。そのうちの一部でも毒ガスの歴史を知って帰ってくれる人がいるなら、それでいいんです」
"素通り"を"滞在"に変える
そう言いながらも、竹原DMOは観光の課題に真っ向から取り組んでいる。
「これまでの通過型観光から、滞在型観光に変える仕掛けをしている最中です。2025年4月に、大久野島を一周するガイド付きのツアーを始めました。電動自転車で島内の毒ガス遺構や絶景スポットを廻ります。始めたばかりの頃は、あまり利用者はありませんでしたが、ツアーの案内を休暇村など宿泊施設のサイトに載せてもらったところ、流入が増え1年で26組57名の利用がありました。
利用者にあわせてガイドするので、利用した方からは高評価をいただいています。戦争という影があっても、島の美しい自然は変わりません。いろいろな歴史に巻き込まれた大久野島を知っていただくためのツアーです」

