休暇村の扱う土産物がファミリー向けだったため、競争を避けて松本さんはターゲットを大人に絞り、うさぎのロゴがついたオリジナル商品でブランディングしていった。読みが当たり赤字は解消できたが、それでも大きな利益は出ていない。
隣には港湾施設の一部である「忠海港待合所」がある。その中に小さな店があり、うどんやおにぎり、パンなどの軽食やお菓子などを販売している。店の人に話を聞くと「待合所の中に売店が欲しいという声があり、県が設置したんです。私たちはその店を借りて営業しています」とのことだった。忠海港で買物ができるのは、ターミナルとこの売店の2軒しかない。
では、忠海駅周辺はどうか。松本さんは言う。
「忠海を通る電車は1時間に1本のJR呉線しかありません。本数が少ないので車で来る人が多いんです。飲食店を構えてもアルコールを提供しにくく、商売になりません」
つまり、忠海には観光客が滞在してお金を落とす場所が現在ほとんどなく、素通りの状況なのだ。竹原市はどのような観光戦略を練っているのだろうか。竹原市産業振興課 商工観光振興係の岡 夢佳さんに聞いた。
「休暇村での消費の増加は、竹原市の税収にもつながっています。ただ、観光客の増加が周辺へ経済効果をもたらしたかというと、一概には言えず、十分にお金を落としていただけていない部分もあります。竹原市では、忠海港から車で15分ほどの『たけはら町並み保存地区』へも足を延ばしてもらおうと、これまでも周遊施策に取り組んできました。しかし、うさぎを目的に来る方たちに、歴史的な町並みにも立ち寄ってもらうことは、少し難しい面がありました」
町並み保存地区を訪れるのは年配層が多い一方で、大久野島を訪れるのはファミリー層や若い層が中心だ。ターゲット層が異なるため、周遊は見込みにくいという。
毒ガス遺構とうさぎ、共存への挑戦
では、関係者は観光客増加によって生じたさまざまな課題を、放置し続けているのだろうか。いや、そうではない。
環境省は2021年、地元の関係者(竹原市、休暇村、フェリー会社、忠海町住民、うさぎ愛好家)と共に、「大久野島未来づくり実行委員会」を組織した。そして、委員会で協議し、うさぎに関する以下の4つのルールをまとめた。
「うさぎにさわらない 手から直接餌をあげない」
「道路上で餌をあげない 足元のうさぎに注意」
「食べ終わるまで見守る 食べ残しは持ち帰る」
「ペット(生き物)を連れてこない うさぎを持ち出さない」

