この島のうさぎは警戒心を微塵も持たず、人に近寄ってくる。それが大きな魅力でもあるが、あまりの無防備さは「うさぎ虐待事件」にもつながった。2024年から2025年にかけ、うさぎ99羽が無残に殺された事件である。うさぎを蹴っているところを現行犯で捕まった男には、裁判で7羽のうさぎに対する暴行について有罪判決が下った。
島を管轄する環境省は、この状況をどのように考えているのだろうか。環境省 中四国事務局 広島事務所の山脇一浩さんは言う。
「事件の背景には、人とうさぎの距離が近すぎることがあります。普通の野生動物は危険を感じれば逃げます。大久野島のうさぎは、もともとペットとして改良された家畜由来であり、野生本来の姿ではありません。うさぎに餌をやる行為が本当にうさぎのためになっているのか、考える必要があります」
また、残った餌の放置も問題だと指摘する。
「大久野島は瀬戸内海国立公園の一部です。残った餌は各自持ち帰るようお願いしています。週末など人が多く訪れる日は、持ち込まれる餌も大量になります。うさぎが食べ残した餌が、イノシシやネズミの餌になってしまっているのです」
休暇村大久野島の土居さんも訴える。
「イノシシは島内で繁殖しています。休暇村のすぐ側にも現れ、まったく人を怖がる様子がありません。これまでイノシシによる人的被害はありませんが、この先はわかりません」
無責任な行動が起こす問題
瀬戸内海国立公園の自然環境や、島の歴史について紹介している「大久野島ビジターセンター」でも、餌やりの問題について啓発している。本来、自然の草や葉を食べるうさぎにとって、人が与えるキャベツやニンジンは「おやつ」のようなものだそうだ。生後1カ月くらいの子うさぎに「おやつ」を与えすぎると、お腹を壊して死んでしまうこともある。かわいいからと与えた餌のために、子うさぎが命を落としているとは、何ともやりきれない話だ。
自宅周辺で刈った草を、わざわざ島に持ち込む人もいる。うさぎが食べると思ってのことだろうが、中にはヨウシュヤマゴボウのような毒のある植物もあったという。「うさぎのため」の無責任な行為がうさぎを苦しめている。

