そして1963年(昭和38年)、休暇村大久野島がオープンした。温泉施設やリフト、展望台、室内プール、テニス場などを備えた、一大レジャー施設である。1965年(昭和40年)に竹原市と休暇村が合同で発行したパンフレットには「むかし 要塞・毒ガス島 いまは温泉・休暇村」のキャッチコピーが踊る。毒ガスは過去のものとされ、人々はレジャーに酔いしれた。
この島にうさぎが見られるようになったのは1970年頃だと、休暇村大久野島の営業課長・土居俊成さんは語る。
「戦時中に実験動物として大久野島で飼われていたうさぎは、すべて処分されています。島外からうさぎが持ち込まれ、放されたことは確かです。しかし、どのような理由があったのかはわかりません」
小学校で飼われていたうさぎ8羽を島に放した、誰かが家で飼えなくなったうさぎを持ち込んだ、などさまざまな説がある。けれど、休暇村にも詳細を知る人はもういない。
かわいらしいうさぎは、大久野島の新たな観光資源となった。当時、休暇村ではうさぎの餌が売られ、観光客はうさぎとの触れ合いを楽しんだ。そして、うさぎは少しずつ増えていった。
大久野島が「Rabbit Island」として世界中に知られるようになったきっかけは、2014年に海外からの観光客が投稿した1本の動画だ。無数のうさぎと触れ合う動画は、世界中に拡散された。香港の有名メディアが取り上げたことも、アジアや欧米での「バズ」につながった。
欧米の人にとって、うさぎは日本の招き猫のようなラッキーアイテムである。そして通常、野生のうさぎは人を警戒する。
「おそらく世界中探しても、これだけうさぎが寄ってくるところは他にないでしょう。非常に稀な場所だと思います」と土居さんは話す。
動画1本で世界に拡散、「36万人」が来た島のひずみ
動画の拡散により、大久野島を訪れる外国人観光客は2年で数十倍に増えた。同時に、日本人にも「うさぎの島」として認識されていく。観光客のピークは2017年の36万人だ。
その結果、うさぎの数も増えた。2018年には1000羽いたというデータがある。しかし、2020年からのコロナ禍により観光客が激減し、うさぎはおよそ半分に減った。
2023年以降は、毎年20万人近くが大久野島を訪れる。

