毎月の支払いに追われ、将来への不安で頭がいっぱいになったとしたら、「落ちないようにすること」で精一杯になる。そうなると、人は幸せを感じる以前に、「生き延びること」にエネルギーを使わざるを得なくなります。
長い間、「お金があっても幸せになれない派」と、「お金がないと不幸になる派」は、対立するように語られてきました。しかし、この研究は、その両方を1つにつなげたのです。お金があっても、それだけでは幸せにはなれない。でも、お金が足りないと、確実に不幸になりやすい。
つまり、どちらも正しかったのです。そして本当に大切なのは、「お金を何のために使うのか」という視点でした。お金を増やすことだけを人生の目的にすると、幸福は思ったほど増えていきません。けれど、お金を「安心を支える土台」として捉え直したとき、人は初めて、幸せを感じる余白を持てるようになります。
人の幸福感を左右する「お金では直接買えない」もの
「お金があればもっと幸せになれる」。そう信じて、私たちは働き、学び、貯め、増やしてきました。でも実際には、収入が増えても資産が増えても、思ったほど心が満たされないと感じる瞬間があります。それどころか「これで本当に大丈夫なのだろうか」という不安がかえって増してしまう人も少なくありません。なぜでしょうか。その答えは、幸福感を本当に左右している要因が、金額の大小とは別のところにあるからです。
お金が増えると、できることや選択肢は確かに増えます。好きな場所に住める、好きなものが食べられる、将来への備えも厚くなる。けれども「安心した」「満たされた」「納得できた」という実感は、金額に比例して増していくわけではありません。
人の幸福感を本当に左右しているのは、誰かとつながっているという感覚、自分で選んでいるという実感、心身が健やかであること、将来に対する漠然としたゆとりといった、お金では"直接買うことのできない"要素なのです。
思い出してみてください。初めてのボーナスをもらった日のことを。封筒を開けた瞬間、あるいは口座に振り込まれた額を見た瞬間のあの嬉しさ。あの感覚は、10年後、20年後のボーナスでも同じだったでしょうか。
もし今は金額が最初の2倍になっていたとしても、喜びは2倍にはなっていないはずです。最初のころは「やった、自分のお金だ!」と純粋に喜べたのに、いつしか「手取りからいくら天引きされた」「去年より増えたのか減ったのか」と数字の精査が先に来るようになっていた……。そんな方も少なくないのではないでしょうか。

