なぜ、お金が増えても満たされなくなるのか、この変化は、決してあなたの感覚が鈍くなったからではありません。むしろ、人として自然な反応なのです。
「自分の価値を測る物差し」に替わるお金の役割
人は「慣れる生き物」。心理学ではこれを「快楽順応(「ヘドニック・アダプテーション」あるいは「ヘドニック・トレッドミル」とも)」と呼びます。
最初は特別だった収入も、やがて"当たり前"になっていく。当たり前になると、そこにあった喜びや安心は感じにくくなります。さらに問題なのは、収入や資産が増えるほど「比較」が始まることです。
■同じ会社のあの人より少ないかもしれない
■もっと稼いでいる人がいる
■SNSではもっと豊かそうな人が目に入る
こうして、お金は本来の役割である「生活を支える手段」から、「自分の価値を測る物差し」へとすり替わっていきます。そして気づかないうちに、「まだ足りない」「もっと必要だ」という感覚に追い込まれていく。これが、"お金の不安が消えない構造"です。
心理学の研究では、幸福に影響を与える要因として一貫して指摘されてきたものがあります。人間関係の質、健康状態、社会的なつながり、そして自分自身の行動に対する納得感です。
これらはどれも、所得が増えれば自動的に手に入るものではありません。年収が1000万円になっても人間関係が希薄であれば孤独感は消えませんし、いくら資産があっても「これは自分が選んだ人生だ」と思えなければ、心の満足にはたどり着けません。
どれだけ稼いでも、どれだけ増やしても、それだけでは必ず幸せになれるとは限りません。これが「お金があれば幸せ」という考えが成り立たない本当の理由です。


