例えば大きな災害が起きたとき、普段から顔の見える関係を築いていれば、「あの家の人、最近足を痛めていたな。避難できているかな」という自然な気配りが生まれる。「干渉」は、取り残されないためのセーフティーネットでもあるのだ。
スローライフを目指すより、タスクをこなす喜びを
「『何もしないでのんびり過ごすスローライフ』って、実はめちゃくちゃ贅沢でハードルが高いことだと思っています。本当に田舎でそれをつらぬきたいなら、草刈りや除雪作業をプロにお願いするなど、暮らしの労働をすべて外注できるような時間的・経済的なゆとりがないと成立しません。
ここ10年で現代人は時間を奪われ続けているので、むしろクイックに大量のタスクをこなす喜びの方が強くなっている。実際に信濃町に住んでいる私の周りの移住者たちも全然スローな生き方はしていなくて、旅をしながら遊んで働いて、お祭りの準備をして……と、むしろ忙しそうに日々を謳歌(おうか)しています」
お金の話だけでなく、地方での暮らしは、草刈りや雪かきなど、都市では誰かがやってくれていたことを自分でやる日々だ。
「草刈りを面倒だと思うか、楽しめるかどうかが分かれ目になります。僕は頭を使う仕事をしている分、草刈りや除雪、薪割りというフィジカルな行為がある意味マインドフルネス的に面白がれている。田舎の方が日々の用事が多くて忙しく不便だけど、やることが多くていろんな技術も学べる。それが結果として『どこでも生きられる力』につながります」

