では、移住がうまくいく人といかない人の違いは何か。徳谷さんの答えはシンプルだ。
「移住に失敗したら、とあれこれ考える前に、まず鏡を見てほしい。あなたは、自分自身をわかっていますか。何かあったときに助けたくなる人間ですか、と。都市も地方も、あくまでも、一対一の人間と人間から社会はすべて構築されています。家探しにしろ、『この人はいい人だな』と思ってもらえたらいい情報が入ってくる。小手先のスキルだけ用意しようとしてもどうしようもないですし、結局は気持ちよく挨拶したり、おすそ分けをもらったらお返しをしたりする基本的なことが求められるだけなんですよね」
では、もし移住してみて合わなかったら?
「合わなかったから出る、でいいと思います。人にも土地にも相性がありますからね。一度移住したからと言って、その土地に縛られる必要は全くない。長い人生の中で、数カ月や数年だけでもこれまでと違う環境に身を置くこと自体は、もっとみんなやった方がいいと思う。これまで思い込んでいた働き方や生き方の根底をいい意味でバラバラにできて、自分の生きるOSをアップデートできるんです。自分の中の当たり前を違う場所で崩すのは、結果的に生きやすくなると思いますよ」
まず解像度を上げていくことが移住成功のカギ
移住先を「選ぶ」のではなく、自分を「知る」ことから始める。山か海か、何万人の街か、大都市から40分の自然にアクセスできるか――。解像度を上げていくことで、自分に合う場所は少しずつ見えてくる。そしていざ行ってみて合わなかったとしても、それは失敗ではない。自分のことがひとつわかった、ということだ。理想の移住先は、地図の上にあるのではなく、すでに自分の中にあるはずだ。まずは自分自身に問いかけることから始めてみてはどうだろう。
取材・文/丸山 風音
株式会社Huuuu代表取締役/編集者 徳谷 柿次郎さん
1982年(昭和57年)、大阪生まれ。新聞配達と松屋のアルバイトでコツコツと積み上げる労働の原点を培う。二度目の上京で編集プロダクションに拾われて、社会人の喜びを知る。その後、ウェブ系のコンテンツ制作会社の創業期に転職。企画、ディレクション、バックオフィス全体に関わって、小さな会社の仕組みを学ぶ。35歳で独立。長野県に移住をして、全国47都道府県行脚がスタート。身体性を軸とした都市とローカルの関係性を考え続けている。主な仕事に『ジモコロ』『Yahoo! JAPAN SDGs』『SuuHaa』『OYAKI FARM』『DEATH.』など。40歳の節目で『風旅出版』を立ち上げて自著『おまえの俺をおしえてくれ』を刊行。長野市ではコミュニティスペース『MADO / 窓』を、飯綱町で『PAKAAN COFFEE STAND』『(do)books』を営んでいる。座右の銘は「心配すな、でも安心すな」。
SUUMOジャーナルの関連記事
●列島を1万キロ歩くモドさんがNYタイムズに盛岡と山口を載せた理由。東京と廃墟ラブホから見える日本 クレイグ・モド(Craig Mod)インタビュー
●建築学生が47都道府県「1300の建築をめぐる旅」で見つけた“本当に暮らしたい街”。就職先に大都市ではなく香川・三豊を選んだ理由
●移住先は「熱海の果樹園付き絶景一戸建て」! 家選びは「資産価値より居住価値」「自分らしい妥協」など目からウロコの”新常識”がカギ

