歴史をひもといた次は、さらに人口規模という軸で移住先を見ていく。
「人口30万人程度の中核都市がすごく面白くて、移住先として真っ先にその軸で選べばいいのにと思っているくらいです」
人口100万人以上の大都市圏で暮らしてきた人が、いきなり自然豊かな小さな町へ移住しようとする。その大きすぎる飛躍が、地方移住をうまくいかなくさせる原因のひとつだと徳谷さんは見ている。
心地よい規模感を自覚するには、時間と経験が必要だ。数日間の滞在ではわからない、暮らしてみて初めて見えてくることもある。「自分のコンディションやメンタリティ、仕事の状態、家族の状態と密接に関係しています。変数がめちゃくちゃ多い」と指摘する。
「東京や大阪、札幌といった大都市圏で生きてきた人は、まずは一度30万~50万人程度の都市で3年くらい暮らしてみると、地方のグラデーションが見えてくる。20万~30万人規模になると、本屋とか映画館とか喫茶店といった文化的な店舗が充実していますし、この10年でそういった面白い個人店はめちゃくちゃ増えています。地方移住の流れもあって、今後も増え続けるでしょう」
長野県は、この点でやや特殊な地域でもある。長野市36万人、松本市23万人、上田市15万人と、エリアごとに20万~30万人規模の都市が点在している。
一方、2万~3万人程度の町になると、「選ぶ理由を見つけるのが難しくなる」と徳谷さんは話す。信濃町のような人口7000人規模の土地まで来ると、判断軸が変わってくる。「自分の気に入った自然にアクセスできるかどうかと、30万人規模の都市への車での移動時間で判断した方がいい。日々の選択肢を増やす環境であれば、田舎でもなんとかなる」というのが徳谷さんの見立てだ。
都市を捨てずに自然へ近づく。「40分圏内」という考え方
徳谷さん自身の移住の軌跡も、このグラデーションをたどってきた。東京と長野市の二拠点生活を経て、コロナ禍をきっかけに東京の家を手放し、長野市の市街地に拠点を移す。いきなり家を建てるのではなく、まずは市街地の賃貸物件から。自分の生活圏の中で、自社オフィス兼コミュニティスペース『MADO』や、取材先で見つけたプロダクトを販売する小売店『シンカイ』、繁華街・権堂でネオスナック『スナック夜風』などを次々に立ち上げながら、まちの中での関係性を育てていった。
一方で、自分の中で「もっと自然のある方に行きたい」という欲求も年々大きくなっていった。長野市を拠点にしながら理想の土地を探す中で、知人の紹介で信濃町の空き家と出会う。そうした段階的な移住を経て、徳谷さんは現在の住まいにたどり着いた。
そんな徳谷さんが提案するのが「40分圏内」という移住のフレームだ。

