「100万~200万人規模の都市は選択肢が多く、仕事もあって、自然にも1時間でアクセスできる。そういう規模感の町から、40分圏内でアクセスできる自然寄りのエリアが、今人気になっているなと感じています」
自身の事例として挙げるのが、自身が暮らす長野県の信濃町だ。長野市から車で40分走ると、標高は300mから700mに上がり、風景が一気に変わる。冬は雪が2m積もる豪雪地帯で、ウィンタースポーツが楽しめる一方で、さらにそこから40分で新潟・直江津に下りれば海に出られ、夏はサーフィンだってできる。
この「40分圏内」という発想は、他の地域にも応用できる。京都であれば、滋賀の湖西エリアがそれにあたる。比叡山の麓、琵琶湖の西側に位置するこのエリアは、100以上の一級河川から水が流れ込む琵琶湖のおかげで、40度近くなる夏でも水温が低く保たれている。山を越えれば40分ほどで京都の中心部へ出られる。
福岡であれば糸島市だ。福岡市内の飲食や文化を享受しながら、車で40分走れば海沿いの糸島市にアクセスできる。札幌市からは長沼町が40分強の距離にあり、農業が盛んな自然豊かなエリアとして知られる。
「自分の好きなまちから40分圏内の尺度で、自分の好きな自然へのアクセスを考えていくと、ひとつの移住のフレームができる気がしていて。考えた結果、自然の中で暮らすんじゃなくて、まちで暮らしながらたまに遊びにいけばいいや、っていうのもありですよね。土地の境界線を超えて、暮らしのフィールドを広く捉えたら移住の選択肢がグッと増えます」
ネットの検索条件だけでは出会えない、地方の家探し
移住先の候補地が絞れてきたら、次は家探しだ。徳谷さんは、理想の住まいを叶えるためには、まず「自分の欲望を言葉にすること」を挙げる。
「“自分を知る”ということ自体が難しくて、下手な人がとても多い。漠然とした印象で家を探すのは困難です。例えば、友人の家に行って『よかったな』と思ったものの気持ちよさの正体を、ちゃんと言葉にすることが大事。窓から山が見えることなのか、天井が高いことなのか、隣家との距離感なのか。譲れない条件を自分の言葉で持っていないと、何を探しているのかわからなくなる」
さらに、「家」そのものだけにこだわりすぎないことも重要だという。
「サードプレイスという言葉があるけど、第3の場所だけじゃなくて、4も5も6も7も8も、みんなめちゃくちゃ小さく持っているはずなんですよ。自分が長野市に住んでいたとき、一番よかったのは温泉へのアクセスがいいことでした。30分圏内で4つの温泉の選択肢があったから、そこをぐるぐる回るだけで相当リフレッシュできた。家の居心地だけで暮らしの質は決まらない。生活圏の中に、自分が機嫌よくいられる場所を複数持てるかどうかが重要です」

