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【追悼】人間・東野圭吾が吐露した胸の内「大学で電気工学を学ばず、デンソーでエンジニアをやっていなかったら……」

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(撮影:梅谷秀司)

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日本を代表するミステリー作家、東野圭吾さんが享年68歳で死去した。生涯106冊(単著のみ)という旺盛な著作活動と裏腹に、東野さん自身がメディアに露出することは少なかった。数少ないインタビューでも作品に関する話がほとんど。「人間・東野圭吾」の胸の内を吐露したことは稀だ。そんな中、筆者は2018年から19年にかけて複数回、ロングインタビューの機会を得て、東野さんの働き方や人生観に迫ることができた。改めて功績を振り返りながら、東野さんの言葉を紹介する。

なぜ世界で1億6800万部も売れたのか

取材のテーマは「最強小説家の秘密」だった。文学性や面白さを基準に作家に優劣をつけることは難しい。多分に主観的な尺度だからだ。しかし21世紀の出版産業における「最強」は東野さんと断じられる。
東野作品の世界累計発行部数は1億6800万部(2023年4月時点、講談社発表)を上回る。累計部数だけなら、赤川次郎さんや西村京太郎さんの方が多い。だが東野さんが突出しているのは、海外での部数が6800万部(同)に上ることだ。例えば『ナミヤ雑貨店の奇跡』だけで世界1200万部以上を叩き出しており、特に中国・韓国・台湾で熱烈に読まれている。
作家ごとの発行部数はデータ化されていないが、文芸出版に関わる人の多くが「世界累計6800万部は日本人作家では前人未到」と見ている。東アジアでは東野作品の版権買付に1億円を超える値が付き、相次いで映像化・舞台化されている。斜陽の出版産業に「日本の小説も外貨を稼げる」という答えを示したのが、東野作品だったのだ。これについて東野さんは、次のように語っている。

——海外での成功は、出版社が戦略を作ったおかげでしょうか。

そういうわけではありません。自然な成り行きっていうんでしょうか。きっかけというのは、僕自身も実はよくわかっていません。

海外で翻訳されることを意識して作品を書いてきたわけではありません。ただ、「この文章は外国語に翻訳したら意味がなくなるよね」ということは以前からずっと意識にありました。文学性があってすごく美しい文章も、外国語に翻訳されてしまうとそのよさがなかなか発揮されません。そういうことより僕が優先してきたのは、本をほとんど読まない人でもパッと手に取って楽しめること。東野圭吾という作家をまったく知らなくても、楽しんでくれたらそれで構わない。

(海外部数は)長期的な積み重ねだったと思います。そして物事は何もかも、そういうふうだと思っているのです。お笑い芸人やアイドルの人が本を出せば売れますが、1発のヒットで終わってしまうことが多い。長い目で見れば、ボディブローのように利いていくもののほうが強いと思います。

「努力を迷わないで」

「ミステリー作家がスノーボード大会を作った。これこそミステリー」。こう語ったのは、プロスノーボーダーの角野友基さんだった。2014年ソチ五輪の日本代表であり、平野歩夢さんとともに日本のスノボ界を牽引する人物だ。その角野さんは、東野さんが私財でスノボ競技大会「スノーボード・マスターズ」を開催(2018~25年)したことに感謝を寄せていた。「東野さんの本って、どこの本屋さんにもある。僕からしたら、雲の上にいるような存在です。そんなすごい人が、スノーボードを愛して投資してくれた。めちゃくちゃうれしいですよ」
冬期五輪の成績で明らかなように、日本には世界級の能力を持つスノボ選手がいる。しかし皮肉にも、国内の大型スノボ大会は減っている。企業の協賛撤退が要因だ。そんな中、数千万円(筆者推定)を投じてスノボ大会を開いた東野さん。ミリオン作家としては最高にかっこいいお金の使い方をした背景をこのように語った。

——作家には好事家が多いものですが、スノボ大会を作るとは趣味の域を超えています。

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