人口減少や疲弊する地域経済と表裏一体で語られるのが地場産業の衰退だ。地場産業は、昔から地域の特産品を生かして発展し、雇用を支えながら地域経済を牽引してきた。
ところが、グローバル化や産業構造の変化に加え、急激な市場縮小や担い手不足に拍車がかかり、多くの地場産業が存続の危機に瀕している。
かつて国内市場をリードした奈良県の靴下産業も例外ではない。安価な海外勢との競合、トレンドの変化で閉塞感が長引くなかで、地元を代表する三ッ星靴下(奈良県大和高田市)と福西メリヤス(同市)の有力2社が相次いで倒産した。あらためて地場産業の難しい環境が浮き彫りになった。
奈良県を代表する地場産業の一つ
靴下は、奈良県を代表する地場産業の一つだ。古くから綿作が盛んな地域で、明治時代に農家の副業として広がったのが始まりとされる。和装から洋装に移るなかで、庶民に手が届く靴下の需要は伸び続けた。
とりわけ、奈良盆地に広がる中和地区は、昭和から平成まで多数の靴下メーカーがひしめき、活況が地元経済を潤した。日本を代表する生産地としての心意気が機械化を推進し、サプライチェーンは生産者から問屋、資材業者、縫製機械メーカーまで整備され、靴下産業の一大集積地に発展した。
この間、機械化による自動縫製技術が飛躍的に向上した。生産量と品質の向上だけでなく、縫製機械で培った技術を他分野に生かす動きも広まった。その中から半導体や精密機器向けの加工機械の大手メーカーに成長し、上場企業も生まれている。

