さらに、2026年3月に『Nature Medicine』誌に発表されたオランダがん研究所の研究もあります。
この研究では、原発不明がんを含めたがん患者123人の計888検体組織を対象に全ゲノム解析を実施したところ、原発不明がん患者の63%(77例)で原発巣の確定診断に至りました。また、123人のうち分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が効く遺伝子の特徴(アクショナブルな遺伝子変化)を持つがんが見つかった割合は、73%(90例)に上りました。
オランダの研究が画期的なのは、これは臨床試験などではなく、実際の医療現場で行われたデータをまとめていることです。検体組織が採取されてから、なんと6営業日で結果が判明しています。
また、研究はいずれも患部の組織を用いた全ゲノム解析によるものですが、原発不明がんでは組織を採取しにくいケースも多いため、今後は血液からがんの遺伝子情報を調べる「リキッドバイオプシー」の有用性も検証されています。
原発巣がわかれば治療も可能
遺伝子解析によって原発巣や遺伝子変異の特徴がわかると、治療の考え方も変わってきます。
具体的には、原発巣が判明すればその臓器に準じた治療を検討できますし、がん細胞に特定の遺伝子的な特徴が見つかれば、それをターゲットにして免疫チェックポイント阻害薬などを用いることも可能です。
先述したオランダの研究では、研究に参加した患者のうち、全ゲノム解析でわかった遺伝子情報に基づく治療(バイオマーカーに基づく治療)を受けたグループは、そうでないグループに比べて、生存期間が31%(日数にして96日)長かったことが明らかになりました。
このデータは、原発不明がん患者だけの結果ではありませんが、論文には、「原発不明がんとそれ以外のがんの結果に有意差はなかった」とも報告されています。つまり、ほかのがんと比べても原発巣が特定できた原発不明がんでは、治療によって良好な結果をもたらす可能性があることを示しているといえます。

