今回紹介した研究2つはいずれも海外のものです。オランダの研究に関して言えば、原発巣がわかった患者さんのなかには、健康保険で治療できたケースもありました。
では、日本ではどこまでがん診療においてゲノム解析が可能なのでしょうか。
日本のゲノム検査の現状
日本ではゲノム解析が保険適用となったのは、2019年6月のことです。しかし、現時点で実施できるのはこれまでお伝えしてきた全ゲノム解析ではなく、数十〜数百の遺伝子を対象とした「がん遺伝子パネル検査」です。OncoGuide NCCオンコパネルシステムやFoundationOne CDxがんゲノムプロファイルなど、2026年時点で5種類の検査が保険収載されていますが、パネル検査と全ゲノム解析では対象とする遺伝子の範囲が大きく異なるため、同列に語ることはできません。
加えて、検査が受けられる条件は「標準治療が終了した(終了が見込まれるものを含む)固形がん、および標準治療のない原発不明がんや希少がん」で、かつ「健康状態から検査後の薬物療法が見込める場合」に限られています。
一方、海外で実施されている全ゲノム解析については、現段階では日本は健康保険の適用外で、研究や臨床試験の枠組みのなかでのみ実施されています。国は「全ゲノム解析等実行計画」やゲノム医療に関する基本計画(2025〜2029年度)のなかで、医療実装に向けた検討を進めています。
ゲノム解析における先進国オランダと比べて、日本のがんゲノム解析の現状はあまりにも遅れていると、筆者には感じられます。
山田五郎さんの訃報は、これまであまり知られていなかった「原発不明がん」に社会の関心を向けるきっかけとなりました。
原発不明がんは、今なお治療の難しいがんの1つですが、全ゲノム解析によって治療法が見つかる可能性があることが、海外の研究で示唆されています。オランダまでとはいかないまでも、日本でもほかの医療先進国なみにがんの全ゲノム解析が行えるよう、環境整備が進むことを願います。

