原発不明がんは、治療により比較的良好な経過が見込める「予後良好群」(全体の15〜20%)と、それ以外の「予後不良群」(80〜85%)に分かれます。
予後良好群は、検査をすると乳がんや卵巣がんなどの特定のがんに似た性質を示すタイプをいい、それらの類似する原発臓器に準じた治療で、比較的良好な経過が期待できます。
対して、予後不良群は十分な検査をしても特定の臓器の性質が見出しにくいタイプをいい、これまでは、どのがんにもある程度効くとされる抗がん剤(プラチナ製剤)を中心とした薬物療法が行われていました。
近畿大学から報告された2019年のデータでは、全生存期間の中央値は予後良好群が29.3カ月に対し、予後不良群が7.1カ月でしたが、2021年12月からは免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(オプジーボ)が最初の治療のあと(2次治療)に保険診療で使えるようになりました。これにより、治療の幅が広がるとともに、生存期間の延長も期待されています。
ゲノム解析で原発巣が判明
これまで原発不明がんは原発巣が特定しにくいことが問題となっていましたが、近年は、がんの遺伝子を解析する研究が進歩し、少しずつではありますが、その謎が解き明かされつつあります。
がんの病理検査といえば、以前は外科医が患部の組織を切除して、それを病理医が顕微鏡で観察することで、がんの種類や悪性度を診断するものでした。そこで調べるのは、がん細胞の形などの見た目です。あるいは、特定のタンパク質を染めて細胞の性質を判別する免疫組織化学染色法が行われてきました。
もちろん病理検査は今も重要ですが、がんのタイプをより精緻に調べるのに役立っているのが、ゲノム解析です。近年では全ゲノム解析(WGS:腫瘍細胞の遺伝情報をほぼ網羅的に読み解く技術)により、これまで病理検査だけでは見つけられなかった原発不明がんの原発巣が、判定できるようになってきたのです。
例えば、2025年5月には『Nature Communications』誌にオーストラリア・メルボルン大学から、こんな研究報告が出ています。それによると、72人の患者に対して、全ゲノムおよびmRNA(遺伝子転写産物)の解析を実施したところ、従来の臨床病理学的評価では診断不能であった原発不明がんの71%において、原発巣が特定されました。

