原発不明がんは、最初にがんが発生した臓器(原発巣)を特定しにくいという性質上、治療方針を立てにくく、タイプにもよりますが、5年生存率はおよそ10%にとどまるという厳しい現実があります。一方で、長く「診断の難しいがん」とされてきたこの領域にも、近年のゲノム医療が進化をもたらしつつあります。
原発巣がわからない理由
そもそも、すべてのがんには、最初にがんが発生した場所である「原発巣(げんぱつそう)」があり、「胃がん」「肺がん」のように、通常は原発巣の名前で呼ばれます。それは、最初に見つかったがんが転移がんの可能性があった場合もそうで、その後の検査で原発巣が見つかれば、最初に見つかったがんは転移したがん(転移性胃がん、転移性肺がん)と診断されます。
なぜ原発巣が大事かというと、胃がんや肺がんといったがんの種類によって、効きやすい薬や手術の選択肢といった治療方針が大きく異なるからです。
これに対して、原発不明がんは「転移したがん見つかったにもかかわらず、画像検査や病理検査を尽くしても、最初にどこで発生したかを特定できないがん」を指します。原発巣が見つからないのは、主に3つの理由が考えられています。
1つ目は原発巣が小さすぎて、現在の画像検査(PETCTやCTなど)では検出限界を超えているため、見つけられないケースです。
2つ目は、私たちの体が持つ免疫システムによって原発巣だけが自然に消滅し、転移がんだけが残っているケースです。そうすると原発巣はなくなっているので、原発不明がんとなります。
そして3つ目は、がん細胞が増殖して塊になる前の、ごく初期の段階でがん細胞が隣接した臓器や血管に入り込んで、増えてしまうケースです。転移する能力が強い、特殊な性質を持っているがんといえます。
このように、原発不明がんとは1つのがんの種類ではなく、「現在の医療技術で十分に検査を尽くしても、原発巣やその痕跡がわからない転移性がんの総称」なのです。

