この系譜の先に、今夏の2作がある。
『キングダム 魂の決戦』の予習環境は、シリーズ映画として徹底している。過去4作はほぼすべての主要配信サービスで視聴可能。そのうえで日本テレビ「金曜ロードショー」が映画公開直前に2週連続でシリーズを放送し、地上波で"着火"させた。
配信棚の整備、地上波でのブースト、そして劇場でのイベント的鑑賞の三段ロケットが完璧に組まれた興行である。前作比124%というシリーズ最速の初速は、人気キャラクター・王騎が前作で倒れた不安要素を、予習インフラが大きくカバーした結果といえる。
『トイ・ストーリー5』の場合は、配信が観客そのものを育てた。観客の中心は10〜20代といわれる。前作『トイ・ストーリー4』の公開は7年前で、当時小中学生だった子どもたちは、劇場の記憶ではなく、配信サービス「ディズニープラス」の配信棚でシリーズを何度も反芻しながら育った世代だ。
ディズニーはこの構造に自覚的で、5作目の公開に合わせてシリーズ過去作の配信を宣伝とセットで訴求。ディズニープラス内の視聴数ランキングはほとんど「トイ・ストーリー」の過去作が独占している。
巨大IPに押し出された“巨匠”の最新作
前作『トイ・ストーリー4』が公開された19年夏、ディズニープラスはまだ日本に存在しなかった。つまり前作の興収100億円は、配信予習インフラが一切ない状態で達成された数字である。
『トイ・ストーリー5』は前作を軽々と超えていくだろう。この7年の間に配信サービスがヒットの水準そのものを引き上げた。本作はそのことを示す歴史的事例となるだろう。
だが、配信サービスの普及は逆に、純粋な新作映画の興行を難しくしてしまった。

