例えば、映画『百万円と苦虫女』(08年、タナダユキ監督)は、親密になりすぎるとその場所から逃げてしまう性格で、100万円が貯まるたびにその場から移動する主人公を演じた姿が印象に残っている。また『クワイエットルームにようこそ』(07年、松尾スズキ監督)で摂食障害の役を演じるために7キロ減量したことは、ある種の武勇伝といっても過言ではないだろう。
スポットライトが自然に彼女に当たる
このまま演技派俳優の道をまっしぐらに突き進んでいくのかと思ったら、19年に芸人・山里亮太と結婚、出産。産休を経て俳優として23年に復帰。朝ドラこと連続テレビ小説『ブギウギ』で、主人公(趣里)が所属する劇団のトップスター役。歌劇のシーンもあって、ブランクをものともせず輝きまくり、ドラマをぎゅっと引き締めた。
そのときの彼女について書いたYahoo!ニュースエキスパートの記事「蒼井優の第8回までセリフを発してないとは思えぬ存在感」は、塚本晋也監督がリポストしてくれたおかげもあってか爆発的に読まれた。記事内で、チーフプロデューサーの福岡利武は「圧倒的な存在感。映画女優だからか、ワンショットの力が違う。どんなシーンでもオーラを放っている」と蒼井を絶賛している。
確かにそうで、初期に注目された『花とアリス』(04年、岩井俊二監督)でも、大ヒットした『フラガール』(06年、李相日監督)でも、スポットライトの中に自分から入っていくのではなく、スポットライトが自然に彼女に当たる。まるで光を吸収してしまうような、ブラックホールのように強烈で底しれないエネルギーをもった俳優なのである。
『ガス人間』では、こんなふうに展開するかなと思ったらそうだった、では終わらず、とんでもないところに連れていってくれた。最終回の京子のセリフは、なぜそこでそれ?というものだ。この勢いで『Tシャツが乾くまで』にも期待している。単に不倫ドラマのメタ化に終わることなく、とんでもないことになるんじゃないかと。この夏の金曜日の夜、胸が高鳴る日々を楽しめそうだ。

