「揚げたて直送便」は、本格的なリブランディングよりも先に始まった取り組みだが、「価格ではなく価値で選ばれる」という考え方は共通している。工場でしか味わえなかった揚げたてのおいしさを商品化した挑戦は、その後の湖池屋が進めるブランド戦略を象徴する取り組みの一つだったとも言えるのではないだろうか。
約100億円を投じて建設した生産拠点
こうした付加価値戦略を支える新拠点として期待されているのが、25年12月に稼働した湖池屋の中部工場(岐阜県海津市)だ。
約100億円を投じて建設された同工場は、中部地方初の生産拠点として物流効率の改善と生産能力の強化を担う。
実際に工場へ足を踏み入れてみると、「じゃがいも本来のおいしさ」に立ち返り、価格ではなく素材や製法へのこだわりで支持されるブランドを目指す姿勢が、製造工程の随所に表れていた。
同社では国産じゃがいも100%にこだわるだけでなく、全国から品質の高いじゃがいもを探し、ブランド品種の活用や生産者とのネットワークづくりにも力を入れてきた。その素材の良さを最大限に引き出すための工夫として、筆者が特に印象に残ったポイントが3つある。
まず、皮をむきすぎないことだ。うまみや風味は皮と実の間に多く含まれるため、見た目の均一さよりも素材本来の味わいを優先し、あえて皮を少しだけ残す製法を採用している。
次に、スライスの厚みへのこだわりである。品種や製造する商品に合わせて、厚みを0.01~0.05mm単位で調整。同じじゃがいもを同じように揚げても、この0.01~0.05mmの違いで食感や味の感じ方が変わるという。
最後は、スライス後の洗浄工程でじゃがいもをお湯で洗いすぎないことだ。しっかり洗うほど焦げるリスクは下がり、見た目も美しくなる一方で、うまみまで流れ出てしまう。あえて洗いすぎず、揚げる温度や時間を緻密に調整することで、焦げやすさを抑えながら、素材本来の風味を最大限に引き出している。

