「私自身も、揚げたてがおいしいことは分かっていましたが、それを消費者に届けるのは難しいんじゃないかなと思っていました。ただ、社内では『難しいからやめよう』という空気ではなかったんです。『大変そうだ』『ここが課題だ』という声はありましたが、これを事業として大きなものにするぞという雰囲気でしたね」
企画から発売まで約半年。同社は最終的に受注生産という形を採用した。受注予測や製造・出荷のオペレーションは手探りの状態から始まり、まるでパズルを組み立てるように、生産計画や物流、EC運営を何度も見直しながら、関係部署が一体となって仕組みを構築していった。
しかし、業界内では、「コンビニで買えるポテトチップスを、わざわざ送料を払って取り寄せる人なんているのか。湖池屋さん、大丈夫?」そんな声まで聞かれたという。
いざ発売すると、新しい取り組みとしてメディアの注目を集め、おいしさが口コミで広がったことで、認知度は大きく向上。受注も伸び、オンラインショップを代表する人気商品へと成長した。
湖池屋が、こうした付加価値にこだわっている背景には、同社が長年にわたり価格競争に苦しんできた歴史が関係している。
2期連続赤字に陥った苦い記憶
湖池屋は、1962年に「湖池屋ポテトチップス のり塩」を発売。日本人になじみ深い"のり"を取り入れたことが支持され、67年には日本で初めてポテトチップスの量産化にも成功。市場を牽引する存在へと成長した。
しかし、70年代以降は競合の参入で価格競争が激化する。84年には「カラムーチョ」が大ヒットするなど独自路線で存在感を示したものの、2010年代には再び価格競争に巻き込まれ、2期連続の赤字に陥った。
転機となったのが16年、元キリンビバレッジ社長の佐藤章氏の社長就任だった。佐藤氏は「じゃがいも本来のおいしさ」に立ち返り、価格ではなく品質や素材へのこだわりで選ばれるブランドへの転換を進めた。
その後、「湖池屋プライドポテト」をはじめとする高付加価値商品の販売は好調に推移し、ブランド戦略は大きな成果を上げていく。

