ただし、両者にはもうひとつ違いがあるという。「なにもない状態からアウトプットすることができるか」である。
ヒントもないし、問いかけも存在しない――。そんなゼロベースの状態から知識を再構築できるのが「動的知識」であり、“それではアウトプットするのが困難な状態”が「静的知識」の特徴になるということである。
なお、「ヒントもなにもない状態で、ゼロから知識をアウトプットし、ひとつの知識を広げていく」行為は、学習科学の世界で「アクティブリコール(Active Recall)」と呼ばれているそうだ。
一定の勉強を積んでいる人であれば、たとえヒントのない状態からであったとしても、いくらでも知識をアウトプットすることができるという。つまり「動的知識」とは、「ヒントがなくても、ゼロからでも再現できるような知識」のことを指すわけである。
ビジネス社会に必要な「動的知識」
注目すべきは、「『動的知識』はビジネスパーソンにとっての武器にもなる」という著者の主張である。「社会に出てから使うことはない」と批判されがちなこと、たとえば「明治維新」に関することでさえ、ビジネスに応用できるというのだ。
たとえば、自分の会社をこれまでとは異なる新たな体制へと移行させたいと考えたとしよう。そんなとき、「明治維新がなぜ成功したのか」を分析することは、きわめて実践的なヒントになるというのだ。
260年以上続いた江戸幕府という巨大な旧体制は、比較的短期間で解体され、まったく新しい近代国家へと生まれ変わることができた。それはなぜなのか。そこには、組織改革に通じる本質的な構造が詰まっているわけである。
トップがひとりで「うちも変わらなければ潰れる」と叫んでいたとしても、組織はそうそう変わらないだろう。しかし、黒船のような「動かしようのない現実」を全員が直視したときには、そこで初めて変革のエネルギーが生まれるということだ。

